「スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー」

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ヨーロッパの広告界で代表的なクリエイターとなっている、
ロイ・アンダーソン監督に興味を持ち、TUTAYAの棚を見ていたら、
彼の長編レビュー作品「スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー
を見つけ、さっそく借りて見てみました。

この映画は、彼がまだ20代の半ばで手掛けているのですが、
15歳の少年と14歳の少女がさりげなく出逢うところから始まり、
お互いの家族の背景などが、過不足無くさらりと触れられてくる。

少年の家族背景は、田舎で小さな板金塗装業を営んでおり、
あらくれ男達の、比較的のびのびした仲間に囲まれて暮らしている。
一方少女の家族背景は、家電企業の優秀な営業マンである父親が、
おカネさえ有れば人は幸せになると信じ込んでいる様子で、
それが原因で、少女の母親は自分が不幸せであると嘆いているし、
彼女の周りの大人の女たちは、あまり幸せそうに見えていない。

そんな少年と少女が、養老院へお互いの家族と会いに来たところで、
ふとしたことから意識し合うようになり、急速に心が通い合う。
仲間との関係がうまく行かなくなったり、喧嘩しそうになったり、
だけどお互いに惹かれ合う純真な心は、誰も止めることが出来ない。

と言っても、この映画は特段の物語性があるわけでもなく、
ありふれた10代半ばの少年と少女の、初々しい初恋の物語です。
それが日本とはまったく違う、スウェーデンを舞台にしながら、
不思議なくらい、自分の中学生の頃のほろ苦い恋を思い出します。
大人の文化的価値観を超えた、恋の原点が微笑ましく描かれている。

どうやらこれが、ロイ・アンダーソン監督の才能なのでしょう。
様々な周囲の背景を、さりげなく並べているのに邪魔にならない。
少年の家族と、少女の父親がまったく違う価値観でいるのに、
それを堂々と言い合いいながら、そうかと言って喧嘩にはならない。
いざこざや家族愛や夫婦の絆が混然とあり、だけど認め合っている。
そんな環境に守られて、お互いの関係を深めていく二人の姿。

よく考えてみれば、日本では決してみられないような大らかさで、
大人も子どもたちも、それぞれの世界を認め合っているのがわかる。
時には孤独でさえある、距離のある関係を保ちながら敵対しない。
ああ、この距離感がスウェーデンなんだなあ!とわからせてくれます。

僕らとは違う文化の国で、僕らと同じ瑞々しい恋をする子どもたち。
人間としてのゴタゴタと愛情を、さりげなく作品に仕上げたこの監督は、
やっぱり優れたクリエイターであり、この作品はラブリィでした!