「ガスパール~君と過ごした季節」

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「名前はジャンヌ。文無しです、よろしく」
なんて書かれた紙を一枚持った老婆に出会ったら、どうする?
原題は「GASPARD et ROBINSON 」っていうフランス映画で、
フランスでだって、こんなことは珍しいと思うんだけど、
まずオープニングで、お婆ちゃんが海辺に捨てられてしまう。
特別辛辣な様子もなく、まるでゴミでも捨てるように捨てられる。

そこに車で通りかかったROBINSONは、このお婆ちゃんを拾って、
自分の家に連れ帰り、かわいそうだからと一緒に暮らそうとする。
その若者と一緒に暮らしていたGASPARDは、とんでもないと思い、
あらためて、このお婆ちゃんを騙して捨ててくるのだけど、
ROBINSONはまた探しに行って、連れ帰ってしまうのです。

このROBINSONとGASPARDは、昔母親に捨てられた想い出があり、
ROBINSONは家族の愛情に飢えている感じだけど、年長のGASPARDは、
一度結婚した相手の女性にも逃げられていて、家族が信じられない。
二人はレストラン開業の準備をしながら、元鍵屋で泥棒なのも面白い。
別荘地帯なので、お金持ちの家に忍び込んで、食料などを盗んでくる。
泥棒で生計を立てるつもりもなく、食料や車を盗んで楽しんでいる。

そこに、さらに貧乏で家も仕事もない母子連れに出会うのですが、
ROBINSONはこの母親の女性が好きになり、淡い恋心を抱いてしまう。
GASPARDはそれを知っていて、あるときこの母親が病気なのを助け、
家に連れてくると、最初は一緒に楽しく踊ったりしていたのに、
やがてみんなを残し、自分は一人でその家を出て行ってしまう。

物語としては、たったこれだけの話なんだけど、いい感じでした。
やさしい心を持って、自分からは何も積極的にできないROBINSONに、
いらつきながらも、一緒に泥棒をしたり、恋の手ほどきをしたり、
乱暴なことを言いながら、実はこの若者を大切に思いやるGASPARD。
これより下があり得ないような、まったく貧乏な人たちが集まって、
海辺にレストランを開いて、自然に家族のように暮らし始める。

なんとなく寄せ集めの、新しい家族のようなものが見えたとき、
ガスパールは黙って、そこを出て行ってしまうんですが、
この彼の気持ちが、なんだか胸に痛く響いてしまうのです~。
やさしさが溢れる、粋な大人の、心やわらかな映画でした!


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