「世界がキューバの高学力に注目するわけ」

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アメリカ型のグローバル経済が、世界中を席巻した時代に、
その侵略を拒否して自立しようとした、キューバのその後を、
長年に渡って取材し続けてきた、吉田太郎さんの著書で、
今度は教育の側面からとらえたのが、この本でした。
「世界がキューバの高学力に注目するわけ」(築地書館

キューバはすでに、有機農業によって自給自立した国として、
世界中から注目を集める国になっていますが、実は教育面でも、
革命以来一貫して教育改革を進め、識字率を飛躍的に高めて、
今ではユネスコをはじめ、世界各国の教育機関が注目しています。
そのあたりの事情が、この本には詳しく紹介されているのです。

いまだに識字率80%台が多い、ラテンアメリカの国々で、
最近のキューバは、99.8%と高い識字率を誇っているうえに、
昨年はユネスコの統一国際学力試験で、キューバはトップだった。
この事実をどう受け止めるか? イデオロギーによるものか?
だけどこの本を読んでいると、あらためて社会正義を思うのです。

人々の人権や平等を守るとか、平和に暮らせる社会を作るには、
まず総ての人々が文字を読み書き出来るようになることが必要で、
これによって人々は、政治や社会活動に参加出来るようになる。
アメリカとの軍事的な戦いを乗りこえて、カストロが進めたのは、
軍事力の強化ではなく、真実を知るための教育!だったのです。

革命後の経済危機の中でも、教育を重視する政策は変えず、
次々に打たれた手だては、目を見張るものがあったようですが、
この本を読むうちに、今まで疑問だった一つのことを理解しました。
それは、キューバがなぜ、コスタリカのような平和国家にならず、
カストロは軍服を脱ぐことなく、政治をリードし続けたのか?

答えは、同じように革命によって教育改革を始めたニカラグアが、
アメリカが組織したゲリラ「コントラ」によって無茶苦茶にされた。
このコントラは、隣国コスタリカで準備されたものだったのです。
コスタリカアメリカに協力することで、多額の援助も受けている。
この脅威を知って、キューバは臨戦態勢を解かなかったのです。

見せかけの平和国家コスタリカは、アメリカの侵略に手を貸した。
これはアメリカ軍に逆らえない日本の姿と同じなのかも知れず、
その脅威にも挫けずに、自国の独立性を守ったキューバこそが、
実は本物の平和国家だったのかも知れない、そう思わされたのです。
今の日本に、キューバのような自立心はないでしょう。

吉田さんのキューバレポートが、都市の有機農業に始まり、
反グローバリズムとして、自給・自立のが出来るわけを紹介し、
注目されてきた医療制度、教育制度を紹介したのは偶然じゃない。
ヘレナ・ホッジさんの「ラダック」と同じ、脱アメリカの道筋を、
革命キューバの姿を通して、示してくれたのかも知れません。

吉田太郎さんの「世界がキューバの高学力に注目するわけ」は(↓)こちら。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4806713740?ie=UTF8&tag=isobehon-22