「ブタがいた教室」

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第21回東京国際映画祭で、観客賞と審査員賞を得た作品、
前田哲監督の映画、「ブタがいた教室」を見てきました。
もとは「豚のPちゃんと32人の小学生」って原作本があって、
黒田恭史先生が、自分の担任クラスで豚を飼って食育をした、
その実話を元に作られた映画と言うことです。

小学校6年生のクラスで、豚を育てながら命の大切さを考える。
確かに興味深い話ですが、最後にその豚をどうするのか?
最初は食用にすると言うことで飼い始めた豚でしたが、
飼っているうちに可愛く思うようになって、ペット化してくると、
殺して食べることに、疑問を持つ子や拒否する子が出てきます。

この映画は、豚がやってくるところから始まって、
やがてくる卒業シーズンに向けて、議論が始まるのですが、
生徒の意見は真っ二つに別れて、多数決でも決められません。
みんなで話し合って決めよう!とする先生の方針もあって、
何度もディベートのような議論が戦わせられています。

この議論の中身は、どうやら台本に書かれていたのではなく、
実際に監督が子どもたちに自分の考えで自由に述べさせた、
その結果が、いくつものディベートシーンとなっているようです。
そうしてみると、自分たちで育てた動物を殺して食べることに、
「同じ命なのに、どうして殺せるのか?」とする疑問もわかる。

「家畜はペットとは違って、食べられるために育てたもの」
との反論は、子どもの発言としてなら明瞭ではあるけど、
「同じ命だから殺せない!」と言われて、それ以上反論できない。
裏の物語として、食肉加工を職業とする父親の話も出てくるけど、
やっぱり「同じ命は殺せない!」を乗りこえられないのです。

最終的には、担任教師が後輩に引き継がずに食肉にすると決めて、
子どもたちは、食用として引き取られる豚と別れるのですが、
命をいただくことの根元的な納得が、子どもたちにあったのか?
食べることの重みが、今少し伝わり切らなかった気がします。
確かに考えさせる点では、成功しているのでしょうが・・・

以前に見た「いのちの食べ方」よりは、心があっていいと思う。
命を無機質な機械処理だけで、もの扱いされるよりも、
こうして愛情を傾けながら、だけど食用としていただく重大さ。
たぶんそこに、感謝の気持ちや信仰心が生まれるのではないか?
それを子どもたちに、少しでも感じて欲しい気がしたのです。


写真は前田哲監督。
原作本の「豚のPちゃんと32人の小学生」は、(↓)こちらから。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4623038335?ie=UTF8&tag=isobehon-22