「図書館ねこデューイ」

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特に著名な作家の作品というわけではなく、
アメリカ合衆国アイオワ州のトウモロコシ畑の中に、
スペンサーと言う田舎町があって、そこの公共図書館に、
一匹の猫が捨てられたことから、この物語は始まります。
書いたのは、図書館の館長だったヴィッキー・マイロンで、
猫はデューイ・リードモア・ブックスと名付けられました。

一見どこにでもありそうな、拾われた赤ちゃん猫の、
18年に渡る生涯を描いた、猫の一生の物語なのですが、
この猫は、ヴィッキーにとって家族となったばかりか、
スペンサーという町の人々にも、特別な猫になったのです。
その経緯が、延々と語られた物語と言ってもいいでしょう。
なにしろデューイは、特別に愛された猫なのですから。

いったいどのような猫で、どのように愛されたのか?
それはこの本に、たっぷりと具体的に書いてあるので、
興味がある方は、直接読んでいただければいいのですが、
特に猫好きでもない僕が、最後まで一気に読み終えたのは、
これが猫を通して、人生を確認した物語だったからです。
作者はデューイを描きながら、実は自分を描いている。

産まれて間もなく捨てられた、ひとりぼっちの猫が、
けなげに人に愛情を示し、自らをも愛するように求める。
それが生きる術だとすれば、自分はどうなのかと考える。
ヴィッキーは、結婚に失敗したシングルマザーだけど、
さらには兄弟を癌や自殺でなくしながら、それを受け入れ、
母の生き様に習って、人生を前向きに生き続けた女性です。

そんなひとりの女性と一匹の猫の、信頼と生涯の物語で、
デューイはヴィッキーの家族であり、最愛の友でもある。
僕は自分が自由気ままに生きているので、ペットは苦手で、
人間とペットの依存関係には、閉口する感覚も少しあります。
だけど、人間よりも短い生涯を生きるペットを愛するとは、
その生涯を見ることで、人生そのものを見るのかも知れない。

この本を読んでいたら、ひとりの女性と猫の関係から、
家族とは何かを考えるよすがにもなり、故郷とは何かを考え、
人生に大切なのは、どんな人にとっても愛でしかないと気付く。
死に至る病や苦悩、経済的破綻、人間的な不信といったものが、
絶望するものではなく、一つのステップだと気付かされる。
この本には、そんな勇気を与えてくれる力があるのです。

秋の夜長、一匹の猫にまつわる物語を読みながら、
静かに自分の人生を振り返ってみるのも、幸いかも。


ヴィッキー・マイロン著の「図書館ねこデューイ」は、(↓)こちらから。
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