「大量監視社会」

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夏旅の間に3冊の本を持ち歩いていましたが、
読み終えたのはジャーナリスト山本節子さんの一冊だけで、
「大量監視社会」(誰が情報を司るのか)というものでした。
情報社会と言えば聞こえはいいのですが、こと日本においては、
個人の人権意識が低いために、恐ろしい事態が進んでいる。
そのことを、具体的な事実を並べながら検証している本です。

既に知られている通り、日本の高速道路では顔写真が撮られ、
車の登録ナンバーと一緒に管理、データベース化されています。
各市町村庁が管理しているはずの住民情報は、住基ネットとなり、
これもデータベース化されて、どんな利用がされるかわからない。
国の出入国では、生体認証までが公然と行われており、
これらの情報の総てが、密かにデータベース化されている。
こんなことが公然と行われているのが、今の日本だと書いてある。

はたしてそんなことがあり得るのかと疑いたくなりますが、
山本さんは、日米の法律を丁寧に調べることによって実証します。
アメリカで始まった全国民のデータベース化が頓挫した後も、
その技術は日本政府と企業に根深く入り込んで、正統化を獲得し、
政府のやることは正しいと思い込む日本独特の国民性によって、
大きな反対がないままに、法整備も進んでしまったのです。
公共の利益のためには、個人情報は勝手に使用されるのです。

テロ抑止、犯罪防止、住民の安全のためにはやむを得ない?
個人の人権意識が高くて、政府権力の暴走を恐れる欧米では、
こうした国民を管理する法律は、ことごとく反対されて頓挫する。
ところが日本では、公共性を優先して認められてしまったのです。
この未曾有の監視体制によって、何が可能になってきたのか?
この本を読んでいると、近い将来に起きる管理体制が見えてきます。
人々の移動、購入物、病歴などがことごとくチェックされ、
政府の方針に逆らうような活動をすれば、プライバシーを失います。

しかも多くの人が漠然と信じている、公務員の公正に関してさえ、
小泉政権以来進んだ多くの民営化によって、危ないものになっている。
たとえば、日本人のあらゆる情報を持つデータベースを管理するのが、
アメリカの軍需産業に関わりの深い、アクセンチュア社であったり、
人権を守るはずの法律が、公共性を優先している事実があって、
その公共性を決めるのが、利権企業グループでしかない現実がある。
すなわち日本は、すでに行政が企業集団に乗っ取られているのです。
これが結果として、住民の幸せより経済優先の政策を進めているのです。

アホでマヌケな圧倒的多くの日本人は、そんなことを少しも知らず、
CMに流れる便利な商品を手に入れるのが幸せだと思い込まされ、
政府も労働運動も、企業利益のために経済発展を押し進めようとする。
そしてこの体制を強固に管理し、人々の関心を購買意欲に導くのが、
将来的にはあらゆる情報を管理する、全国民のデータベース化なのです。
いずれは、この方針に反対する人の声はすばやく抹殺されて、
かつて誰もが経験したことのない、新しい全体主義が生まれるのか?
そうしたことを、この本は警鐘しているのだと読みとれました。


山本節子さんの「大量監視社会」は、(↓)こちらから。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4806713619?ie=UTF8&tag=isobehon-22