「地域をデザインする」

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以前にベルナール・スティグレールの本を読もうとしたときに、
彼の本は新評論からしか出ておらず、値段が高いので躊躇しました。
するとこの出版社の本は、5冊読んで読者カードを送ると、
1冊無料で手に入ると知って、彼の本を買うことにしたのです。
スティグレールの本を2冊買って読んで、読者カードを送って、
他に面白そうな本はないか?と、チェックしたときに見つけたのが、
この駒宮博男さんの「地域をデザインする」だったのです。

そんな経緯で見つけた本にもかかわらず、これは面白かった。
基本的な考え方や価値観に共感するところが多く、安心して読める。
さらに僕とは異質な行動力や、そこから生まれた実績があって、
本が面白い以上に、駒宮さんその人が魅力的でもあるのです。
家庭を持って、二人の子どもの父親をしながら、自分で家を建てる。
その家が、理論上理想的な形であるフラードームの家だったりします。
そして彼は日本の森林や農業のことを考え、自給自足に挑戦する。

この本の根底にある思想、つまり駒宮さんの考えは奥深いのに、
日常の生活を通して話が進むので、本自体はとても読みやすくて、
すらすら読んでいるうちに、日本の正体があからさまになってくる。
国交省の「二地域居住」の危うさや、衣食住の自給のことなど、
未来へ挑戦する彼の生活を通して、現代の何が異常かを示します。
書いてある「欧米と日本の自然観と言語観の違い」なども共感するし、
人類の長い歴史の中では、自然資本主義こそが本流であると言う。

行政の合理化が目的だった市町村合併で、合理化が進まないわけ。
合併で出来た大型市町村で、中央集権的な政治をすれば財政は破綻する。
国のお墨付きで借金を増やす自治体は、公債比率が確実に増え続けて、
やがてブラックリストに載れば、学童保育子育て支援も出来なくなる。
そんな街に立派な道路や商店街があっても、若い夫婦は定住できない。
今の豊かさに満足している政治家や老人には、危機意識がないのです。
私たちは将来の新しい世代のために、今やっておくべきことがある。

そして彼は僕と同じように、食とエネルギーの自給を重要課題として、
自らの生活で、その解決モデルを探っていくところも共感できる。
彼はきっぱり「都会人に持続可能社会は考えられない」と言うのです。
「できるだけ小さな地域で考え」「すべてにおいて地産地消」する。
この持続可能な社会に向けての、人口、食の自給、エネルギー自給を、
公開されている資料からシミュレーションして、解決方法を探ると、
金融資本主義どころか、科学や産業そのものを疑わずにはいられない。

それでは、僕らはもう絶望するしかないのかと言えば、そうではない。
もしもローマクラブが「成長の限界」を発表した1972年に、
人類が幻の成長に終止符を打って、方向転換していれば楽だったけど、
それが出来ずに現代にいたり、人類の衰退は避けがたくなっているけど、
それでもまだ、将来の子どもたちが破綻なく生きる方法は残されている。
たったこの二百年の物質文明に見切りを付けて、数千年の歴史に戻り、
自然資本主義に還って、持続可能社会を作ればいいと言うのです。

そう、この本は、僕が普段からバラバラと記事にしていることを、
駒宮さん自身の実生活を土台に、さらに専門的な知識も上乗せして、
一つの読み物のような読みやすさに、まとめられているのです。



駒宮博男さんの「地域をデザインする」は、(↓)こちらから。
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