「バッテリー」

イメージ 1

あさのあつこの小説「バッテリー」は、去年映画が公開されて、
今年はNHKが、連続ドラマとして番組をオンエアしています。
映画公開時は、どうせ子ども向けのスポーツ感動ものと思って、
見に行かないまま、ロードショウは終わってしまいました。
だけど何故か評判がいいので、少し気にしていたところ、
NHKのドラマになったと知って、第一回から見てみました。
これがなんだか、妙に物語に引き込まれていくんですね!

第二話も見て、やっぱり面白くて、早く第三話が見たくなって、
そう言えばもう、映画版のDVDが出回っているのだから、
まずはそちらで見てしまおうと思って、借りてきました。
どちらも出演者は、バッテリー役は僕の知らない人だったし、
脇役陣も、それぞれまったく違和感を感じない配役だったので、
両方ともスムーズに世界に入って行けたのが、まず面白い。
どうやらこの作品は、野球に主眼があるわけじゃないんですね。

なにせずっと興味がなかったので、この映画の評価がどうなのか、
まったく何も知らなかったのですが、原作本はよく売れている。
バッテリーⅠ~Ⅵの6冊で、1000万部を超えているとの話です。
それを知った上で、この原作のテーマは何だったのかと考えると、
なるほど、現代において迷い人になってしまったような家族、
この家族の孤独と、再生の物語だったんだと、納得するのです。
実は主な登場人物の中で、唯一の女性である母親がポイントです。

男たちは、お爺ちゃんから、お父さん、弟、友達、ライバルまで、
みんなちゃんと心が通じているのに、母親だけが孤立している。
その孤立を責めるわけでもなく、みんなやさしく見守っている。
「自分にとって野球とは何か?」みたいな設問も鋭いですね。
それらは必ず、人生とは何か?、人間とは何か?、に置き換わる。
弟の健康を願うが故に、その弟の心を理解できなかった母親が、
男三代の愛情によって解きほぐされて、何かを掴んでいくのです。

この物語は、確かにピッチャーとキャッチャーが主人公だけど、
キャッチャーが女房役と言われる、その女房こそ鍵なのです。
三代の男たちと暮らす中で、どこまで彼らを信頼できるか?
野球に明け暮れる息子の心を受け入れられないで、辛く当たる、
その子の味方をするお爺ちゃんにも、つい怒ってしまう母親。
夫はそのどちらの気持ちもわかっていて、強いことが言えない。
だけど母親を苛立たせる男たちの言動の中には愛情が溢れている。

なんだかねえ、この作品は、子どもの成長を見るようでいながら、
実は母親の成長記録なのかも知れない、とそんな気がしました。
現実がこれほど愛情に満ちたものであるかどうかはわからないけど、
少なくともこの母親は、男三代の愛情に囲まれて育っている。
もしかしてこの作品は、女の願望から生まれたのではないか?
だからつまり、これほどまで愛情に包まれた家族を持ちたい!
その意味で、主な女性が母親一人なのは、なるほどと思うのです。


映画版のDVD「バッテリー」は、(↓)こちらから。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000M2DJGS?ie=UTF8&tag=isobehon-22