「サン・ジャックへの道」

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見終わって、なんとも言えず、さわやかさの残る映画でした。
コリーヌ・セロー監督が作った大人の童話のようなお話です。

仲の悪い兄姉弟の三人が、亡き母の遺産を受け取る条件として、
フランスのル・ピュイからスペインのサン・ジャックまで、
1500kmにも及ぶ巡礼路を、一緒に歩くはめになるのですが、
そこに様々な事情を持った男女と、ガイドのギイが加わります。

いわゆるロード・ムービーの一種になると思うのですが、
この総勢9名の一行は、問題ばかり起こしながら先へ進む。
なにしろ三ヶ月にわたる巡礼ですから、いろんなことが起こり、
その都度、ガイドのキイが一生懸命問題を解決してくれる。
だけどキイも、残してきた家族に大きな問題が起きているのです。

この巡礼ロードが、どのくらい一般的なものなのかは知りませんが、
道筋の風景はすばらしくて、それを見ているだけでも気持ちがいい。
そして映画の前半では、9人のメンバー自体が問題を起こすのに、
途中からは不思議な仲間意識で、自然と助け合うようになっている。
この仲間意識が、様々な困難を克服していったりもします。

人生は旅だ!などと言いますが、本当の旅に多くのものは必要ない。
参加者はそれぞれ、自分のバックを一つ担いでいるだけですが、
それでなんとか事足りるし、アル中の弟は着替えさえ持っていない。
彼はすべてのものを借り物で済ませ、それが生き方にまでなっている。
メンバーの中で一番いい加減なこの弟も、なんとなく憎めない。

遺産相続の条件で、巡礼の旅に出た話なんてつまらなさそうだけど、
人が幸せを見つけるきっかけは、何でもいいのかも知れません。
イスラム教徒の従兄弟が、キリスト教徒の巡礼地を一緒に回って、
共に喜びを分かち合っている姿も、なぜか違和感がないのです。
むしろ、人間とは何かを、考えさせてくれたりもします。

そしてやっぱり、この映画の一番の魅力は巡礼そのものなのです。
1500Kmを歩くうちに起きてくる人間の変化と、移りゆく風景の変化。
こんなところなら、一度は訪れてみたいと思わせる美しい景色が、
随所にさりげなく配されて、人の心まで美しく見せてくれる。

最後にサン・ジャックに辿り着いて、生まれ育った別荘を訪れる。
その兄姉弟の三人を、窓の奥から嬉しそうに見ている婦人は、
もちろん、三人の母親に違いありません。心に暖かい映画でした。


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