言葉にならない

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24時を過ぎて、クリスマスが終わり、
また眠れないまま、テレビを見ていたら、
小田和正さんが、ステージで歌っていました。
彼が全局歌うのを見るのは、久しぶりです。

たぶん何かの、特集番組だったのでしょう。
早稲田の学生に、自分が作曲した歌の指導で、
うまく歌の世界に入れない学生と対話した時、
学生がこんな質問をしました。

「言葉にならない!と思ったのはどんな時ですか?」
それは小田さんの曲の歌詞から聞いたのでしょう。
彼は迷うことなく、たくさんあると答えました。
「それをどれだけ見つけられるかが人生だ」と、
言葉は正確じゃないけど、そんな風に答えて、
その歌詞を含んだ曲を、ピアノで弾き語りました。

 こ とぉばに、な らぁない ♪(そのヒット曲でした)

言葉にならない想いだから、彼は曲をつけて歌う。
僕は曲をつけることを知らないので、考え続けた。
日々の生活の中にさえ、感動して涙しながら、
自分はどうして、こんなにも何かに感動するのか?と。

たとえば、バレエの映画「オーロラ」を見た時に、
ロマンチックなストーリー、などにまったく関係なく、
マルゴ・シャトリエの踊る姿に感動してしまう。
しかも動きの少ない、tiptoeで前後に揺れる場面で、
ただその踊る姿の存在に、言葉にならない美を感じて、
世界に人が存在したことを喜ばずにはいられなかった。

こうした感動は、子どもの頃から知っていたのです。
夏休みの終わりに、西空が真っ赤に焼けるのを見ると、
その美しさに感動して、世界の果てへ行きたくなった。
珊瑚礁の美しさに惹かれて、沖縄の海へ行くようになると、
海中にある命の豊かさに触れて、環境保護を意識した。

だけど僕には、言葉のほかに表現するものはなくて、
様々な本を読み、工夫していくつもの文章も書いてきた。
多くの人に出会い、言葉を交わして心を分かち合ってきた。
中でも今年、一番大きな出会いはスティグレールでしょう。

その本を読んだ感想を、出版元の新評論に書いて送ったら、
新刊本を紹介する冊子に、取り上げられて載っていました。

「『現勢化ー哲学という使命』
 人は自分を大切に生きようとすれば自然と哲学してしまうし、
 同時に社会との関わりを抜きにしては文化的な生活はできない。
 その根本的な理由をうまくわからせてくれる本でした。」

一年を振り返る時期になって、一人でいることの寂しさを思い、
だけど妥協なく自分を生きて、そうしかならなかったのだから、
すべてを受け入れて、生きていくしかないのでしょう。
今まで、あまりにも多くの感動を味わって生きてきたから、
それを思い出しているだけで、未来まで見えてくるのです。

僕はいつのまにか、自分が知っている以上に長く生きて、
まだ言葉にならない、時空を超えた何かを温めているのです。
いつか少しずつ、言葉に紡いでいけますように・・・


ベルナール・スティグレールの「現勢化ー哲学という使命」は(↓)こちら。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4794807422?ie=UTF8&tag=isobehon-22