「カルラのリスト」

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今回の東京行きで、この機会に見ておきたかった映画が何本かありました。
その一本が、渋谷のアップリンクで上映された「カルラのリスト」でした。

カルラとは、スイスの司法長官を務めた女性で、それまで誰も手を付けなかった、
マフィアの隠し口座を調査し、銀行業界の強烈な抵抗にも屈せず戦い続けた。
そして、元メキシコ大統領サリナスの預金1億5000万ドルを凍結したことによって、
スイスで唯一、24時間武装したガードマンに守られる公人となった人物です。

彼女が、旧ユーゴスラビア戦争犯罪を裁く国際刑事法廷の検事に任命されて、
調査の上で国際指名手配されたのが、カルラのリストに載せられた人たちなのです。

その国際指名手配によって、戦犯ミロシェヴィッチが逮捕されたことは有名です。
そこにどのようなドラマがあったのか?そもそも何が起きていたのかを知りたい。
たぶん僕と同じ気持ちで、この映画を見に行った人は多かったのでしょう。
公開初日の「ぴあ満足度ランキング」で、1位になったと報告されています。
その点数が90.3の高得点で、この数字の高さが、作品の秀逸度を表してもいます。

映画は時系列に従って、カルラがやっていることを解説しながら追いかけていく。
様々な国の要人と、寸時を惜しむように会談し、交渉によって犯人逮捕を要請する。
しかし彼女に警察権はないので、犯人が隠れている国の協力がないと逮捕できない。

そうした困難な状況下で、彼女は決してあきらめないことを信条に活動を続ける。
映画のポスターにも使われた彼女のこの写真は、見事にその強い意志を示している。
けれどまた映画の中で見せる笑顔はチャーミングで、人間の優しさも知っている。
一切の妥協を許さずに、世界を飛び回って容疑者の逮捕と裁判を求めていく。
その一部始終を見ているだけで、人間に対する信頼を取り戻せそうな気がする。

ドキュメンタリーでありながら、ミロシェヴィッチ逮捕というドラマがあって、
彼は「自国の法に従って行った行為を、他国の法で裁くことは出来ない」と言う。
それに対しても、カルラは少しもひるまず、国境を越えて裁く必要を訴える。
近ごろ日本の政治家は、何かと「国際社会」を語るのが好きそうだけど、
そうして参加した国際刑事裁判所で、どれだけの貢献をする準備があるのか?
まさか商売っけたっぷりの防衛省でオイルの横流し国際貢献だとは笑わせるな!

強靱な鉄の意志を持って、戦争犯罪を許さないためには国家権力とも闘う検事。
すり切れた言葉に堕ちていた「正義」の意味を、久しぶりに噛みしめました。