「みえない雲」

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去年の暮れに公開されてから、なんとか見ておきたいと思っていた映画です。
原発事故の恐怖を描いた作品で、なかなか日本では上映されないけど、
3月の能登半島地震で、震源地に近い志賀原発がたまたま動いていなかった、
この奇跡的な幸運を肝に銘じて、ひとたび原発事故が起きた場合に何が起きるか?
まず少しでも、自分でイメージできるようになっておきたいものです。

公開半年にしてDVDになったのは、なかなか上映してくれる映画館がないからで、
それならDVDで見てくれというシネカノンの態度は、好感の持てるものです。

さっそくTUTAYAで借りてみたのですが、やはり優れた人間ドラマになっていました。
日本でも原発放射能の問題は、以前より大きく取り上げられるようになりましたが、
この地震の多い狭い国土に、55基の原発があること自体が異常だと言うしかない。
そしてすでに多くの人が知っている通り、事故は隠されながら頻発しているのです。
その事故がどのような種類のものかに関係なく、ひとたび大事故が起きればどうなるか?

それは原子力の専門家のように、原子炉内や発電所内のことを言っているのではなく、
その周辺で暮らしている我々市民の生活がどうなるかを、なぜ行政は言わないのか?

この映画の主人公は、平凡な生活をしている女子高生で、母親と弟との三人暮らし。
彼女が学校で知り合った男の子と初キッスをしている最中に、原発事故の警報が鳴る。
それから次々に彼女を遅う困難は、原発がある限り誰にでも起こりうることで、
その日のうちに家族を失い、茫然自失したまま放射能の雨に撃たれる姿は悲しいです。
この悲しみは、人間が作り出した傲慢から来るものだから、あまりにもせつない。

  世界一原発密度の高い日本なのに、
  この国には原発事故に対する住民マニュアルもない。

ドイツで大ヒットしたこの映画が、日本ではほとんど上映もされないことを、
僕らはいったい、どう受け止めて考えたらいいのだろうか・・・
だけどこの映画には、絶望だけでなく、人間としての救いも描かれている。
被爆したことによって狂っていく人生の中で、人は何を信じて生きていくのか?
この映画は単なるパニック映画に終わらず、人間の素晴らしさも見せてくれるのです。

DVD「みえない雲」は(↓)こちらから。
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