「反戦軍事学」

「戦争に反対だと考える人ほど、軍事に関する知識を持ってもらいたい。
 ・・・軍事について正しい知識を持てば、戦争賛美などできなくなる」
帯にこう書いてあったので、なるほどそうかも知れないと思って、
朝日新書から出ている林信吾著の「反戦軍事学」を読んでみました。
僕のブログにも、様々な人がコメント意見を書いてくれる中で、
日本の再軍備が必要だと思っている人が、けっこういますので、
そこで意見交換するには、最低限の軍事知識は必要だと思うからです。

読んでいると、僕の軍事知識もそれなりに当を得たものだとわかって、
やっぱり軍事力を増強しても、国民を守れるはずがないと確信できる。
それは軍備を増強したい人たちがよく言う「国防」意識で明らかなように、
彼らは生活者である市民を守りたいわけではなく、国家機能を守りたい、
戦闘員として多くの人を死なせても、あるいは市民生活を犠牲にしてでも、
「国の独立と平和を守りたい」だけであって、この場合の「国」とは、
「わが国の歴史、伝統に基づく固有の文化、長い年月の間に醸成された国柄、
 天皇制を中心とする一体感を享有する民族、家族意識である」・・・?

これは明治時代の勤皇の志士ではない、元統合幕僚会議議長というから、
自衛官のトップの地位にあった、栗栖弘臣(故人)が言っていることなのです。
軍事力の何たるかを知る人にとって、軍隊が市民を守れないことは明白です。
だから最近の国防意識というのも、市民を守るものでないことは確かです。
それじゃ何を守るのかと言えば、繰り返しになりますが国家権力です。
国家を守らずして国民を守れないと思う人もいるかも知れませんが、
もともと国家があって市民が生まれたワケじゃない、市民が国を作っている。
市民生活を守れないような国家なら、さっさと交代してもらっていいのです。
まさしく北朝鮮こそ、市民を守らず国家を守る典型的な例でしょう。

この本を読み終わったら、ちょうど太田総理が阿部首相を批判していました。
もちろんテレビのバラエティーでの話ですが、憲法を改定して軍事力を整え、
もって自立した美しい日本を作ろうという、公約の実現について、
なし崩し的にやるのではなく、堂々と議論することを求めていました。
僕もこの問題に対しては、もっと議論されるべきだと思っているので、
まず何が議論されるべきかを明確にするために、投票を設定しています。
このブログのトップにある投票がそれですので、見ていただきたい。
阿部首相の主張は、一番支持の少ない(2)に該当するのです。

さらに核武装で国民を守ろうなんて、冗談みたいなことを言うくらいなら、
まず日本中に散らばっている、原子力発電所などの核施設を撤去して、
わずかな攻撃で壊滅的な被害を受けるような危険が無いようにしてほしい。
さらには諸外国の事情次第で、明日も覚束ない食とエネルギー事情を、
少しは自給できるように、自然エネルギーに分散をしたらどうなのか?
さらには環境がこれ以上悪化すればミサイルどころではないのだから、
この国を守ろうと本気で思うなら、軍備よりも環境保護に金を掛けたらいい。
憲法を変えて軍事力を整えても、税金の無駄遣いにしかならないでしょう!

読んでいるうちに、著者の林信吾さんに共感すると共に、
阿部首相を中心とする改憲武装論に、あらためて腹の立つ思いがしました。
その意味でこの本は、まさしく反戦軍事学そのものなのなのでしょう。
多くの人に読んでほしいと思わずにいられませんでした。

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