「フラガール」

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今年の日本アカデミー賞で、最優秀作品賞を取ったと聞いて、
多少の期待をして見に行ったけど、予想以上に面白い映画でした。
まず何と言っても松雪泰子の役柄が魅力的で、目が離せない。
プロのダンサーが「お姉ちゃんの踊り子」としか見られない炭坑町で、
自らの強烈な個性でもって、周りの人を次々に変えていくのですが、
そこに生まれる女たちの連帯は、それまでの男社会を変えていく。

この映画は、すでに十分に社会的評価を受けてきているけど、
僕はこのところ、女性感覚がどう社会を変えられるのかを考えていて、
その一つの答えが、この映画の中に映し出されているように感じました。
冨司純子が娘に向かって「炭坑の女は男を支えて生きるもんだ」と言う、
だけどプロダンサー(松雪泰子)の踊る姿に圧倒された娘(蒼井優)は、
女だって自分の力で生きていけるはずだ、と確信して踊りを習い続ける。
古い因習の男社会で、自立して生きようとする女の姿が美しいのです。

さらに、古い社会にしがみついて新しい世界を見ようとしない男たちに、
夢を実現しようとする純粋さをもって、突進していく女のパワーが凄い!
最初は、都会から来たチャラけた踊り子でしかなかった松雪が、やがて、
接する人たちを次々に魅了していって、先生と慕われるようになる。
自分の教え子が、フラダンスをしていることで父親に暴力をふるわれたとき、
その娘を思うあまりに怒りでみさかいが付かなくなり、乗り込んでいく、
男風呂での躊躇しない暴れ方は、爽快を通り越して全身が震えた。

この映画の見所はあまりにもたくさんあるので、これ以上は書きません。
出演者も監督(李相日)もすばらしいけど、この映画には他にも秘密があります。
それは自分たちが作りたい映画を作るための資金集めとして行われた、
ファンド形式による出資の公募と、それを実現させたシネカノンの配給です。
即ちこの映画の実現こそが、既成権力に立ち向かうフラガールだったのです。
大きな力に巻かれているだけの時代は、炭坑が閉鎖された40年前に終わり、
女と市民が自立した社会は、この映画で完成されたのかも知れません。

この映画は明日、フラダンスの特典付きDVDが発売されます。
お金に余裕のある方は、(↓)こちらから購入できるようです。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000GQMJCU?ie=UTF8&tag=isobehon-22