池田晶子さんの死を悼む

イメージ 1

朝から用事で出歩いていて、時間が空いた時に図書館に入った。
そこで新聞を見たら、池田晶子さんが亡くなったと書いてあった。
驚いて記事を読むと、2月23日に肝臓癌で亡くなられていたらしい。
その一週間前に、東京自由大学で講演が予定されていたので、
一度は池田さんの講演を、直に聴いてみたいと思っていた僕は、
ギリギリまで日程調整している内に、定員オーバーになっていた。
もしもその講演が実現していたら、最後の講演になっていたはずで、
僕としてはどれだけ悔やむことになったか知れないことでしたが、
その講演は、ついに実現せずに中止になっていたようです。
たぶん池田さん自身も、出来ることならやりたかったでしょう。

2005年の暮れに、911事件に関する記事を読みたくて買った、
週刊ポストの新春特大号の中で、ある一つの記事が僕を撃った。
それが池田晶子さんの幸福論であり、そこにはこう書いてあった。
「儲け話も金儲けした奴の悪口もやめれば、人はもっと幸せになれる」
週刊誌の半ページほどしかない小さな記事だったけど、僕は驚いて、
何度も何度も、嬉しくてその記事を読み返したのを覚えている。
戦争や環境の問題と同じように、お金の問題は世界に蔓延している。
しかも誰もそれを指摘できないでいるかのように、常態化している。
と思ったら、池田さんは当然のように、その状態を切って捨てる。
迷うことなく切り捨てるこの態度に、僕は愕然としたのを覚えている。

それ以来、池田さんの本を続けて何冊も読んで、珍しく3冊は買った。
彼女がどんな思想家であったかを、僕が語れるわけではないけど、
人の目を気にして迷いの中にいた僕を、間違いなく勇気づけてくれた。

「周りの全部が金儲けに奔走している時に、
 私は金儲けのために生きることはしないと決める。
 金を儲けた人を妬んで、皆が悪口を言っている時に、
 私は人の悪口は言わないと決める。金がなくなって、
 生きてるか死ぬか追いつめられた時でも、
 いやそのような時だからこそ、私だけは善く生きて
 善く死ぬのだという構えを最後まで崩さない。」

こんなふうに、常に言いきれる人は、池田さんしかいなかった。
もうこうして過去形で語るしかなくなったと思うと、さみしい。
今僕は、月々5~6万円の生活費を工面しながら、自然農をやり、
いくつかの市民活動をお手伝いしたり、ブログを書いたりして、
お金ではない、生き方としての幸せを求めて暮らしているけど、
ときには無力感で力が出ない時など、池田さんを思いだしていた。
いやこれは過去形ではなく、これからも変わらないだろうと思う。
これも一つの出会いだったと考えながら、古い本棚を眺めていたら、
いつ買ったのか思い出せない、94年版の「考える人」があった。
まだ東京で働いていた時に、いつか読もう買って置いた本だった。

すべては繋がっているのだろうけど、何かは手遅れになることもある。

池田晶子さんの数ある書物の中で、僕が好きな一冊を選ぶなら、
「人生のほんとう」これ(↓)を皆さんにお勧めします。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4901510401?ie=UTF8&tag=isobehon-22

人生に善いものを教えてくれた池田晶子さん、ありがとうございました。