「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す」

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この本の著者、ジョセフ・E・スティグリッツは、
1995年から97年まで、アメリカ・クリントン政権の、
大統領経済諮問委員会の委員長を務めて辞任したあと、
2000年1月まで、世界銀行の上級副総裁を務めた経済学者です。
2001年には「情報の経済学」でノーベル経済学賞を受賞して、
2002年の著書「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」は、
世界中で翻訳されてベストセラーにもなっているようです。
その後の著書「人間が幸福になる経済とは何か」を経て、
去年出版された「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す」
読んでみると、現状のグローバリズムがいかに歪んだものかわかります。

この十数年のあいだに、グローバル化は経済を主軸に世界中で広まり、
それまでの世界情勢だけでは計り知れない変化をもたらしました。
大きな経済成長もありましたが、同時に経済破綻する国もあり、
激変する経済状況を、少しでも緩和して被害国を救済するために、
世界銀行IMFなどが、さまざまな国の財政に介入してきました。
その結果、さらなる苦境が途上国にもたらされ、負債が負債を生んで、
グローバリズムは何の恩恵ももたらさないかの如く嫌われてきています。
これは何も開発途上国と呼ばれる国々だけの反応ではなくて、
欧米の先進諸国と呼ばれる国においても、失業率の増加や賃金低下を招き、
多くの国において、閉鎖的な民族主義さえ台頭しているのです。
グローバリズムは人々を幸せにはしない、間違いだったのでしょうか?

現代における世界的経済界の事情を詳しく知るスティングリッツは、
経済のグローバリズムだけが先行して、政治が伴っていないために、
全体の公正なルールがないまま、強い国が弱い国に不利益を押し付けている、
これが様々な問題を生みだしている最大の原因だと、主張する内容です。
特に最近の十年においては、アジアや南米において被害を受けた国が、
IMF世界銀行には頼らない政策を、次々に始めており、
そのもっとも大きな傾向が、外貨準備のドル離れだと指摘しています。
それには、中国やインドによる大量のドル確保によるドル不安も絡み、
世界の国々は、さらなる外貨を貯め込みながら準備通貨を分散させる、
すなわち、ドル以外の通貨による外貨準備も増やしていると言うことです。
同時にアメリカは、先行きの見えない未曾有の赤字大国となっているのです。

ドル通貨だけが外貨だった時代、それまで経済的に問題のなかった国でも
アメリカの公定歩合や為替レートの変動と、各国の為替レートの変動により、
劇的に国内の経済事情が変化してしまった、苦い経験を持っています。
これは日本でもあったことで、世界の国々は、その経験から学び、
世界銀行の政策や、ドルだけの外貨には頼らない政策を始めました。
スティングリッツはこれを、グローバリズムの公正に向かう好機として、
遅れた政治的なルールを整えていけば、世界は確実に良くなると言うのです。
この指摘は当たっているでしょうし、新しい世界の流れは確実に、
経済でも多様な通貨によるバランスを求め始めているように見えます。
しかし問題は、好き勝手な振る舞いをやめないアメリカの態度なのです。

アメリカはあまりにも強大な唯一の超大国になってしまったので、
世界中で自分の作ったルールが世界のルーだと言わんばかりに振る舞い、
結果として、自国にさえ大量の失業や貧困層を生みだしている。
この事実を解決するには、みんなが何を目指しているのかを、
もう一度確認して、そちらの方向へ軌道修正する必要があるのです。
すでに不信で一杯になっている世界銀行IMFは、このままでは、
世界の貧困や経済問題の何一つとして解決できないでしょう。
この本の中で、スティグリッツは母国アメリカを批判しながら、
真のグローバリズムを達成するには、特定の利権集団へ利益誘導しない、
公正な世界政治こそ必要だとする主張している本なのです。

だけどさあ、地方政治でも、国の政治でも、世界政治でも、
特定集団への利益誘導しない公正な人を代表に選べるのかどうか?
結局は、有権者ひとりひとり個々人の意識の問題が大きいのでしょうね!

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