「アイ・ラブ・ユー」

今年話題になりそうな映画の一つに、「日本の青空」があります。
日本国憲法を創案した、憲法学者鈴木安蔵を取り上げた映画で、
これを平和映画祭で上映したいと思って電話したら、断られました。
どうしても上映したいと思えば、方法はあったかもしれませんが、
僕はこの映画を監督している大澤豊さんをよく知らないこともあって、
あまり無理はせずに、そのまま引き下がってしまいました。

それでもなんとなく気になっていましたら、高岡市の図書館に、
大澤監督の「アイ・ラブ・ユー」があったので、借りて見ました。
これは99年公開で、それなりに話題になった作品のようですが、
当時は会社を辞めるために落ち着かない時期だったこともあり、
マスコミで大騒ぎされていた映画以外は、ほとんど知らないのです。
サラリーマン時代には、基本的に文化から疎外されていたかも?
もちろんこんな映画があったことは、まったく知りませんでした。

ろう者と聴者が一緒に作った、初めての本格的映画と書いてあっても、
だけど内容が伴わなければなあ・・・なんて勝手に心配しながら、
時間をつくって見始めたら、途中では感動して泣いてしまった。
この映画は、1999年「全国映連賞」特別賞も受賞してるんですね。
主演の忍足亜希子の演技はすばらしいし、存在感も強くあるのだけど、
小学3年生の娘役を演じている岡崎愛が、とても好感が持てました。
同じ年頃のお子さんを持つ人には、親子で見て欲しいなあ♪

映画の中では、小学生の「いじめ」なども出てきますが、
それをしっかりと、子どもの視点で捉えているのも自然だったし、
助けてくれる仲間の存在で、みんなが和解していく様子もいい。
近所の人たちも、実は助け合いたい気持ちを持っていたりして、
それが切実に、時には滑稽に、よく気持ちが伝わってくるのです。
黒柳徹子不破万作西村知美、宍戸開などの脇役も味があるし、
物語も、各場面の表現も、気持ちを寄せて見ることができました。

この映画は、当時全国で80万人の人が見たと書いてあるけど、
今でも古くないし、人間が失ってはならないものを描いている。
人間にとって一番大切なコミュニケーションを巡る物語なのだと思う。
大人の偏見も子供のいじめも、うまく分かり合えないジレンマで、
格差社会とは、そうした偏見を定着させるところに一番の問題がある。
子どもの自殺やいじめがなくならないのは大人社会の反映なので、
大人社会が変わらなければ、子ども社会だって変わりようがないでしょう。

この映画を見ていたら、問題を解決するのはお互いの信頼で、
生きる喜びとは、信頼できる人間関係を築くことなのだと教えられる。
耳が聞こえない、何かが足りないことによって、感じ取れるものがある。
それはひるがえって、人は多くのものにしがみついているあいだは、
本来はもっと気付けるはずの繊細なものを見失っているのかも知れない。
言葉じゃない、感じ取れるものの素晴らしさが伝わってくる映画でした。

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