神様ネットワーク

欧米の一神教に対するアジアの多神教とは言うものの、
それでは多神教とはどのように成り立っているのか、
せめて自国の事情くらいは知っておこうと思い、
日本神話に詳しい戸部民夫さんの「神社のルーツ」
(血統から探る「神様ネットワーク」)を読んでみました。

読み始めてみると、自分でも知っている神社や神様が、
次々に出てきて、大変な種類と数になってきます。
あまりに多くて、整理がつくのか?ってくらいですが、
戸部さんはその神社の系統を探ることによって、
実に巧みに、分類わけをされていくんですね。
そうした分類が正統かどうか、異論もあるでしょうが、
素人の僕なんかには、これでわかりやすく全体が見える。

伏見稲荷、笠間稲荷、豊川稲荷などの稲荷系、
八坂神社、広峰神社、氷川神社などの祇園系、
西宮神社今宮戎神社美保神社などの恵比寿系、
この3系統をまとめて、(1)都市の血統とする。
同じように、(2)山の血統と(3)海の血統、
さらには(4)人神の血統を考えることによって、
日本中の膨大な数の神社がどのように成り立ったかを、
その祭神から見て考えた集大成とも言えるでしょう。

それにしても驚くのは、三島神社諏訪神社日枝神社
白山神社愛宕神社浅間神社、多賀神社、貴船神社
賀茂神社石清水八幡宮伊勢神宮厳島神社、熊野三社、
出雲大社住吉神社塩竃神社金刀比羅宮春日大社
熱田神宮、大鷺神社、北野天満宮平安神宮・・・等々
どれをとっても名前ぐらいは知っているから驚きです。
これらがそれぞれ自分の系統を持っていて、
日本中の神社はいずれかの流れに属するというわけです。

こんなにたくさんあるんじゃ、まとまりがないかと思うと、
そこが面白いところで、全体が複雑に重なり合いながら、
みんな同じように大きく二つの流れが合わさって出来ている。
一つは古代神話も含めて、この国を統一する流れの上にあり、
もう一つは日照・天地・農耕神を祀る地場信仰との合併で、
明治以前は、そこに仏教の教えまでが合流していたようです。
すなわちさまざまな神々が祀られていると言っても、
それらは対立しない、同じ高天原の親類縁者だったりするんです。

そしてここに、靖国参拝で問題になる概念も出てくるのですが、
日本では国や人々のために尽くして功績の大きかった人は、
死んだあとでは神様として祀られる慣習を持っていたのです。
人は誰しもいずれ死ぬものではありますが、孤独ではいられない。
そこで戦争で死ぬ人は「靖国で会おう!」となるわけで、
人間が必ず問わずにはいられない「私は誰?」の答えでもある。
この本を読んで、そんなことまで見えてきた気がしました。

「神社のルーツ(血統から探る「神様ネットワーク」)」
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