記憶の彼方から

僕のもっとも古い記憶は、4歳前後のことで、
まだ改築される前の家の裏庭に、納屋があって、
そこで遊んでいたときに、幽霊が出ると脅かされたこと。
それから鶏が一羽飼われていて、その卵を取ったこと。
あるいは父親の自転車に乗せられて、庄川町へ行ったこと。
なんでここでこんな事を書いているかというと、
このあとの記憶はほとんど女性が関係しているのです。

そりゃあ、男同士であった出来事だって覚えてはいますが、
何か大切なこととして覚えているのは、女性が絡んでくる。
例えば幼稚園の頃に、はじめて女性を意識するのですが、
これは隣の席にいた子で、僕に脱脂粉乳のミルクをくれた。
それだけの記憶なんだけど、他はウンコをちびったことと、
新しいおもちゃを見せびらかしに持って行って、
他の男の子が使っているのを見て喜んでいたことかな。

小学一年生のときは、実は食べ物に好き嫌いが多くて、
給食がイヤだったこと以外は何も覚えていない。
それが2年生になって、担任の先生が面白い人だったので、
この頃から少しずつ自分の気持ちで生きるようになれたかも。
女の子を意識して、お医者さんごっこなんかしたのもこの頃で、
まだSEXのことなんて何も知らなかったけど、
好奇心も旺盛だったので、興味津々だったんだね。

あらためてもう一度、どうしてこんなことを書くかと言えば、
自分ってさ、人である前に男、つまり♂であることが先だと、
そんなふうに本気で考えていたことがあるので、
心の源泉を探っておくことは、意味がありそうに思うからさ。
親しくなった女の子にパンツを脱いで見せてもらおうとして、
「それじゃ、あんたも脱いで見せてよ」と言われたときに、
交渉が決裂したのも覚えている。だってその当時は、
チンポはよくても、お尻を見せるのが恥ずかしかったんだ。

これも何故そうだったのか、今考えるとよくわからない。
ただ一つだけ、そのときに思い知ったことは、
男と女は考えることも違うってことだった気がする。
だってお尻なんか同じだから、見たってしょうがないじゃん。
この頃はまだ暗闇が怖くて、夜にトイレへ行きたくなると、
兄か姉か母親を起こしてついてきてもらっていた。
まあここまでが、僕の小児期だったのかも知れない。