「マグダラのマリア」

イメージ 1

最近になって、キリスト教界が揺れている。
僕のように門外漢でも、キリスト教は男性中心で、
女性は聖職者にもなれないと知っているのに、
「マリアの福音書」が発見されてから何かが変わった。
広くグノーシス思想と呼ばれていた異端的教えが、
急に大きく見直されるようになってきているのです。
しかしこのへんの事情はニュースになるわけでもなく、
僕は「ダビンチ・コード」で初めて興味を持ちました。
この世界的な大ヒットとなった作品の中で登場する、
マグダラのマリアとはいったい何者なのか?

そこで手にしたのが、先月出版されたこの本でした。
アメリカのチャップマン大学教授マービン・マイヤーと
宗教学者エスター・デ・プールの共著による、
「イエスが愛した聖女・マグダラのマリア」です。
今まで、少なくとも僕らが知っているの歴史の中では、
神秘と偏見のベールに覆い隠されていた女性、
とは言え、新約聖書の四つの福音書にも登場して、
エスのそばに実在したと思われるこの女性の存在は、
なぜ長い間、隠されようとしてきたのだろうか?
この疑問に答える試みが、この本の意味と思われます。

その手掛かりとして、マリアの福音書のみならず、
ペトロの福音書、トマスの福音書、フィリポの福音書
さらにビスティス・ソフィア、マニ教詩編集などから、
マグダラのマリアを書いたと思われる箇所を集めて、
四つの聖典と比較する作業を進めていくのです。
こうした聖書外典を読んだこともない僕にとって、
エスの教えにとって重要な鍵となるこの女性が、
どうして今まで覆い隠されてきたのかが不思議でした。
そして女性を大切にすると聞いていた西欧社会には、
実は強靱な女性蔑視の思想があったことも知らされる。

今では世界中の人がその重要性を知る女性ですが、
この本を読んでいると、マグダラのマリアの教えが、
キリスト教の重要な教えを押さえているのかがわかる。
そのマリアの福音書の中で、マリアが見た幻の描写、
魂が宇宙の権力を次々に打ち負かす話は興味深い。
昇天の四段階として、四元素から魂が解放されていく。
すなわち権力から解放されるには、第一は「闇」、
第二は「欲望」、第三は「無知」、第四は「怒り」、
この四つの権力要素にうち勝つ必要性を説いている。
ここに至って、宗教の本質を感じるときに僕は、
仏教もキリスト教も本質は同じだと思ったのです。

さてこの本では最後まで、なぜマグダラのマリアが、
多くの教えから外されてきたのかは書いてありません。
作者はただ、マリアが独自の役割を持つ重要な弟子、
とだけ示し、今後さらなる読み解きを通して、いづれ
歴史の闇から本来の姿を現すだろうと書いている。
それを読み解くのは、たぶん僕ら一人一人なのでしょう。
そして読み解けたときに、僕らは真の自由を手に入れる。
この本はそうした閉ざされたものに光を当てている。
2006年の最後に、この本を読めたことに感謝します。

「イエスが愛した聖女 マグダラのマリア」購入は(↓)こちらから。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4931450784?ie=UTF8&tag=isobehon-22