「プーチニズム 報道されないロシアの現実」

最近まで存在も知らなかったこの本を、読んでみようと思ったのは、
つい先日イギリスで亡くなった元ソビエト諜報員の死因が気になって、
関連記事を読んでいたときに、何か大変なことが起きているような、
最近のロシアのことが急に心配で気になってきたからです。
どう見たってロシア政府が絡んでいるとしか思われない放射能殺人事件。
「プーチニズム」の著者アンナ・ポリトコフスカヤ取材の直後に倒れ、
ロンドンの病院で亡くなった後に、死因がポロニウム210と判明する。

この放射線物質は、どこでも手にはいるような代物ではなく、
ロシアでさえも、大型原子炉でしか取り出せないものだという。
プーチン大統領は、もちろん政府の関与を否定しているけど、
ポリトコフスカヤの本を読むと、どう見てもプーチンの仕業で、
余人には出来ない手法を使ったのは、自らの力を誇示したと考えられる。
日本に暮らしていると、まさかそんなことが、と思いがちだけれど、
僕らはロシアのことなどほとんど知らないし、ニュースもないのだ。

例えば2004年9月1日に起きたベスランの学校襲撃事件で、
実際には千人以上が人質になっていたのに、354人だと発表して、
しかも毒ガスを使うような強行突入をしたのは何故だったのか?
911事件の後、ロシアでは何でも「対テロ戦争」の名の下に、
何故かチェチェン人などの少数民族が徹底的に差別され始め、
いつまでたっても戦争をやめようとしないのは何故なのか?
ベスランの学校を襲撃したグループの要求は戦争の終結だったのに。

ロシアは隣国の一つなのに、日本のマスコミを見ていると、
かの国のニュースを見ることは滅多にないし、関心も示さない。
ゴルバチョフペレストロイカソ連の解体が始まったあと、
エリチェンは闇雲に資本主義を導入して、ロシア国内は大混乱した。
ギャングに始まる新興財閥が地方経済の実権を握るようになると、
プーチンの登場と共に、その成金と元KGBが政治の実権を固めていく。
これが現在のロシアの姿だと、ポリトコフスカヤは訴えているのだ。

ただし彼女は、だからプーチンが悪いとだけ言っているのではない。
「ロシアの良心」と言われて世界的な賞を多数受賞している彼女は、
こうしたプーチンの独裁的現状をもたらしたのは市民の無関心だとして、
一番の罪は無関心だった市民の側にあることを主張している。
これは今は余所の国のことだと澄ましていられるかも知れないけど、
数年後には日本のことになる可能性だって十分に考えられる。
そうなってからでは遅いことを、彼女の死とこの本は教えている。

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