「蝉しぐれ」

去年公開された映画だと思うけど、
その前にNHKのテレビドラマでやっていて、
ドラマでの印象があまりにも良かったこともあって、
映画で失望したくないと思って映画館には行かなかった。
この頃ようやくNHKでの印象が薄れてきたので、
TUTAYAの100円サービスデーに合わせて借りてみた。

いや、これはNHKとは違った演出で面白かった。
各シーンが計算されたアングルで美しく撮られている。
風景のロケハンもいいし、当時の生活習慣も描かれて、
家並みや道具、暮らしぶりの時代考証までしっかりしている。
時代劇ではあたりまえと言えばあたりまえのことだけど、
こうした映像がいい加減だと興ざめすることが甚だしい。
テレビとは違う広い映像の活かし方も良かったし、
なるほどこれなら、映画であらためて見る価値はある。

さらにはキャストも、公開前に予告編で見たときは、
NHKの印象がまだ強すぎて、違和感があったけど、
今回見たときには、全く自然に最後まで見ることが出来た。
どうやらこの映画は、今までの映画作りとは何かが違う。
そう思ってスタッフをチェックしてみていたら、
監督・脚本の黒土三男の他に並んだ名前がとても多い。
制作、制作統括、プロデューサー、エグゼクティブプロデューサー、
共同プロデューサー、協力プロデューサー、ラインプロデューサー、
とまあ凄い人たちが並び、蝉しぐれ製作委員会まであったらしい。
しかもここに電通の名前まであるではないか。

なるほど、この希に見る魅力的な原作に合わせて、
HNKが連続ドラマとして放映して、まだまもない頃に、
わざわざ映画にして見せようとする意気込みが見えている。
昔と違って、映画会社だけでこうした企画は難しいのだろう。
それをこうして多くの人が集まって一つの力に結集する。
この映画のすばらしいできばえを見ていると、あらためて、
これからの日本映画に何か期待していいような気持ちになってくる。
「ALWAYS三丁目の夕日」のような話題性はないけど、
時代劇としても名作と呼べる映画に仕上がっていると思う。