「グローバル化と文明の衝突」

富山国際大学で、土野繁樹の講演とパネルディスカッションがありました。
土野さんは元「ニューズウイーク」(日本版)編集長で国際ジャーナリスト、
年間の7割はフランスの田舎に家を持って暮らしておられるそうです。
スエーデン人の奥さんも会場からいろいろコメントしておられました。
パネリストには、高岡の男女平等参画でお目に掛かった加谷さんも見えました。

話はフランスを中心とするヨーロッパにおける一般生活者のグローバル化で、
現代社会の最も大きな特徴は、交通・通信手段の発達によって、
物、人、カネ、文化などが、自由に往き来するようになったことだと捉えます。
その具体例として、10年前にはまったく考えられなかったこととして、
例えばフランスの片田舎で中国人が日本食レストランを営業して、
その食材がドイツ製で、客がイギリス人で、会話が英語だったりするわけです。

統計的にも、80年から05年までの25年間に世界の貿易量は5倍に膨らんで、
例えば中国人海外旅行者の数は、去年日本人海外旅行者よりも多くなっている、
こうしたグローバル化は、良くも悪くも押し留めることはできないのでしょう。
問題は、こうしたグローバル化には様々な問題があることで、
その一番大きな問題として、世界中に増えている移民問題があると指摘される。
これは近い将来に労働力不足となる日本にとっても避けられないことで、
ポイントは政治力であると共に、マスコミの役割が大きいだろうと指摘された。

政治では、フランスとドイツの関係がお互いに70%の国民が信頼し合っており、
それは戦後の政治的な努力と子どもたちの交流によって築き上げられたのに比べ、
日本では同じような中国や韓国との関係において、信頼関係が築けないでいる。
この背景に、靖国参拝にこだわる政治家や、マスコミの報道を上げておられた。
元読売新聞外報部長の鈴木康雄さんが「新聞記事は人を挑発しながら真実を見極める」
と発言されたのを受けて、土野さんが「最近のマスコミ記事は質が落ちている」
とおっしゃったのは、まったく僕らも感じていることとしか言いようがない。

ディスカッションのあとの会場とのやりとりも興味深い発言がいくつもあって、
国際大学の学生が、スエーデンでは男性が家事をすると聞いているけど本当か?
との質問に、「パブロフの犬のように食事の後は洗い物をする」と答えられたり、
日本のマスコミだけでは、世界情勢はわからないと話されたのも印象に残った。
それらは普段から感じていたことではあっても、ジャーナリズム現場の人が、
こうして話されると、やはり大きな実感が湧いてくるのは間違いないようです。