「天空の草原のナンサ」

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ラクダの涙」と同じビャンバスレン・ダヴァー監督の作品で、
前作と同じようにモンゴルの草原を舞台にしており、
今回は寄宿舎から休みで帰ってきた小さな少女と犬のお話。
パルムドールをもじったパルムドッグ賞を取ったらしいけど、
物語はいたってシンプルで、映画賞をもらうような要素も少ない。

あまりにもどうってことのない遊牧民の日常を描いた作品で、
主人公のナンサが見つけてきた犬をどうするかってこと以外には、
これと言って大きな盛り上がりもない淡々とした作品なんだけど、
この天空の草原を見ているだけで、なんでも許される気がする。
そのくらい、画面が圧倒的に美しいし、音楽も自然でした。

あとで監督のインタビューを聞いたら、この出演者家族は、
「ラダックの涙」の時と同じで、プロの役者ではないとのこと。
現地でロケハンをするように探して見つけた実際の家族でした。
もちろん主人公のナンサや妹も素人の女の子ですが、
無理に演技させるのではなく、自然にそうなるようにし向けている。

これって、ドキュメンタリーに近いドラマだとも言えるでしょう。
最後に赤ん坊がいなくて探しに戻る場面以外は、大きな事件もなく、
雄大な草原の中で、小さな少女が普通に生きていく姿を描いている。
ところがこうした風景自体、モンゴルでも少なくなっているらしい。
その死生観も含めて、この映画は一つの文化の記念碑なのかもしれない。