「トリコロール 赤の愛」

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12年前の映画なのに、古さを感じなかった。
クシシュトフ・キェシロフスキ監督の作品で、
トリコロール三部作の完結版になる。
実は過去に見たことがあるつもりでいたのに、
見ていないとわかって急に見たくなったのだ。

物語は、モデルの仕事をしている女子大生が、
うっかり犬を跳ねてしまうところから急展開する。
持ち主を捜して訪ねると、彼は盗聴を趣味にしていた。
しかも元判事で、そんなことをしてはいけないと諭す彼女に、
「正義とは何か」と言ったことを逆に問い掛けてくる。

真剣に悩む女子大生と、それを見て心を開く元判事。
その周囲では多くの隠し事や悲しみを孕んだ日常が続く。
そうしたなにげない生活風景を丁寧に描きながら、
この作品は、愛情とは何かを追求しているように見えた。
男と女の関係に留まらず、親と子、兄弟、家族の信頼。

けっしてわかりやすい映画ではないし、難しい内容だ。
複雑に絡み合う、あるいはすれ違う感情と映像が、
人間にはどうしようもない何かの存在と、それでも、
信頼しあい、愛し合うことの素晴らしさを描いていた。
フランス映画の味わいを深くたたえた作品でした。