憲法を変える財界のココロ

「ピースチョイス」と言うメルマガに載った、
経済同友会幹事、品川正治さんのインタビューが、
MLなどあちこちに転載されて話題になっている。
財界の内側から見た、財界が改憲を望む理由が、
よくわかる形で語られているからでしょう。
転送歓迎(ピースチョイスより)ってことで、
少々長いけど、ここにも転載しておきます。

ーーーー(ここから転載)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Q1.戦争に向かう欲望には、どのようなものがあるのでしょう。

A1.戦争になってしまう条件を考えてみましょう。まず軍隊があれば、武力
をただ持っているだけでなく、実際に使ってみたくなります。この誘惑がひと
つの条件です。次にかつて「死の商人」とよばれた戦争で儲ける企業の存在で
す。アメリカには確かに、石油、情報・通信、輸送などの業界が軍産複合体
形成していて、戦争を策動しています。それから、政治家にとっては、国内政
治に対する不満を、戦争によって他国への敵意にすりかえて、不満そらしがで
きるのも戦争の魅力になっているのです。

 戦争とは何か、確認しておくと、戦争になれば勝つためにはそれ以外の価値、
命であろうが、否定してでも勝とうとする、また国の全ての活動が戦争を中心
に回っていくようになる、ということです。今のアメリカはまさにそのような
態勢になっています。

Q2.今、日本の財界はなぜ改憲に熱心なのでしょうか。

A2.まず、アメリカはあの国力によって絶対に勝つのだから、勝ち馬に乗っ
ておくのが正解だという考え方です。これについては、財界人はアメリカがや
っている戦争を甘く見ているのではないかと思います。アメリカはベトナム
ように負けないとは限りませんし、その経験から今必死になっている。

 アメリカは絶対に負けないために、欧州で英米同盟があるように、アジアで
は日米同盟を基礎にして、日本を戦争態勢に巻き込もうとしている。これに日
本はおいそれと足かせになっている9条2項を変えてしまおうとしているので
すが、普通ならわざわざ無理をして戦争に巻き込まれにいくでしょうか。今だ
からやるというのは、まともな判断とは思えません。そういう意味で経済界や
政治はアメリカの戦争を甘く見すぎているといえます。

 ただ、うがった見方をすれば、アメリカの意図を知り、日本が戦争に踏み込
む危険を知り、それでも改憲を、と主張している人たちは、国を売っていると
しか言いようがなくなります。

Q3.確かにまずはアメリカですね。他にはいかがでしょうか。

A3.次に、アジアの覇権を、台頭してきた中国に渡すのではなく、日本が握
りたいという思惑があります。アジアの経済覇権を握るには、軍事的な存在感
が必要だから、日本は再軍備すべきという意見です。これは「脱亜入欧」、
「富国強兵」にみられるような19世紀から20世紀にかけての古い近代思想とい
えます。もう近代化を前提とした経営、経済の時代ではないはずなのですが、
まだ経済界も政治もこれに囚われているんですね。

 しかし、アメリカ追従とアジアの覇権への野望、もっと具体的に言うと、
日米関係を大事にして改憲して戦時態勢をつくり、一方で日中関係を両立させ
て、中国市場を確保するなんてことができるのでしょうか。これは決定的な
矛盾だと考えます。さらに、米国は従属しているはず日本という国に、アジア
の覇権を渡したりするものでしょうか。このあたりまで来ると、財界人の内心
というのは、推し量れないところがあります。

Q3.日本の軍産複合体改憲を誘導していると思いますか。

A3.日本の産業界は、9条があることもあって、いままで軍需に依存しない
経済モデルでやってきましたから、そうした要素はないと思います。例えばア
メリカと違って、日本では石油資本は微弱ですから、経済界、政界をコントロ
ールする力はないでしょう。一方、アメリカを主たる市場にしている日本の
情報・通信業界などがアメリカの軍産複合体モデルを手本にして、利を狙って
いるということはありそうです。こうした業界の勝ち組の人たちは、アメリ
軍産複合体の企業と同じような考え方をしているかもしれませんね。

Q4.現在では、経済主要3団体(経済同友会日本経団連日本商工会議所
がこぞって改憲提言をまとめていますが、どう考えればよいでしょう。

A4.本来、国民が議論すべき「憲法」というテーマについて、経済団体が意
見すること自体がおかしいはずです。経済団体のトップは、国民が選んだわけ
でもありません。なのに提言する。国民の論理ではなく、企業の論理で政治が
動かされようとしています。

 例えば1997年前後の金融危機に、経済団体が何か提言していたという記憶は
ありません。考えてみると、その頃から現在までの間に経済は政治に口出しし
ないという原則が崩れてきたのでしょう。

Q5.改憲に反対する経営者は他にもいらっしゃいますか。

A5.それはいますよ。私が孤立感を感じているなんてことはありません。
経営者を相手にこうした講演をすることがありますが、私の意見に面と向かっ
て反対してくる人を見たことはありません。

 一方で、現在の日本の産業構造は、サービス産業のウェイトが高くなってい
ます。サービス産業は軍産複合体には関係がありませんから、日本がこうした
方向へ向かっていくことには反対していいはずです。ただ、経営者としては、
主流の取引先との関係を大事にしないと、というのはありますね。

 しかし経営者といえども市民でもあります。いまいろんな業界で9条を守る
グループが形成され始めています。損保9条の会、商社9条の会などです。

 働いている人々は戦争を望んでいない人も多いのです。繰り返しになります
が、企業社会の論理ではなく、市民の論理で憲法を論じなくてはなりません。
                     〔インタビューまとめ:宮川〕

ーーーーー(以上)ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さて、ここまでがインタビューの転載で、
一つだけ、僕が感じたことを付け加えておきます。

品川正治さんのお話しは、なるほどと思いますが、
これだけでは見えてこないものもあるような気がします。
改憲論を唱える企業家の中には、社員の会社に対する求心力と絡めて、
国家を頂点とした管理体制の確立を目論んでいるのかと思うことがある。
いわば既成利権の確保を視野に、管理体制の確立を目指す改憲です。
社会不安を広めている人間的価値観の崩壊を、
権威権力の強化によって管理しようとする考え方から、
軍隊を容認する改憲論が経済界に広がっているように思うのです。

犯罪が増えれば、犯罪の原因を探って犯罪のない社会にしよう、
と考えるのではなく、犯罪取り締まりを強化して、
自分たちの財産利権を守ろうとする考え方です。
弱者を切り捨てる強者理論で管理体制の確立を目指す人が、
管理国家強化の一環として軍備を望んでいるように思うのです。
いつの時代も、常設軍備は国内を管理するものです。