「ダメージ」

古い作品だけど、久しぶりにフランス映画を見た。
不倫物を描くのが得意なルイ・マル監督のもので、
この映画では、父と息子が同じ女性を愛してしまう。
父親役のジェレミー・アイアンズのことも、
息子と婚約するジュリエット・ビノシュのことも、
どんな俳優かよく知らないので新鮮さはあった。

政治家として重要な地位もある50代の男が、
息子と付き合い始めた20代の女性に惹かれていく。
やがて不倫が始まり、女も男に惹かれていく。
不倫のセックス描写はいかにも欧米的で激しいだけで、
色っぽさやセクシーさはほとんど感じなかった。
男が女に溺れていく過程も、いま少し味わいがない。

息子の恋人にずるずると溺れていく50男の感覚は、
息子よりも父親を愛してしまう女心と補完する。
父親が女に結婚を申し込んだときに
「あなたはもう私を手に入れている、
これ以上何が欲しいの」といなしていながら、
息子からの申し込みには応じたのはなぜなのか。

それでもこの映画には、生きることがままならない、
やるせなさのようなものが漂っていて味がある。
若い時には自分の想いに押し潰されて死にもするけど、
年を重ねると共にそうした選択はしなくなる。
女性は新たな恋をして子育てに染まっていくし、
男性はひとりで気ままに生きる自由を選び出す。