「ラダック(懐かしい未来)」

ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ著:「ラダック(懐かしい未来)」
本として読んだのが去年の春先で、とても共鳴する内容だった。
その後「懐かしい未来:ラダックから学ぶ」としてビデオが出たので、
さっそく取り寄せて鑑賞したのが、今年の5月だったと思う。
内容としては、本で読んだ長い歴史上のラダックの部分よりも、
経済化で変貌していくラダックと、そこに発生する問題点が中心で、
グローバリゼーションを脱して、共生社会を目指す内容になっている。

去年の春、3月23日の「ISO-BE通信」で感想を書いたときは、
E.F.シュマッハーの「 Small is Beautiful 」を引き合いに出し、
ホッジの業績を女性らしいねばり強さの成果だとたたえている。
それは僕にとって、男性的な競争社会を脱してよみがえる、
古くて原初的な母系社会へ回帰願望だったのかもしれない。
当時の感想を読み返すと、「自然や命の価値を一番に考え、
家族や地域のつながりに幸福の基盤をおく考え方が、技術と経済を
優先させるよりも人を幸せにすることを証明している」と書いている。
金銭経済の呪縛から逃れる一本の道筋を垣間見ていたのだろう。

その後の僕は僕なりに、まみあなでその夢を形にしてみようと試みて、
一シーズンの間に一定の感触は得ることができたと思っている。
ただしそこは自分が自由に出来るフィールドとはならなかったので、
また居場所なくさまよううちに、沖縄で平和映画祭を開くことになり、
そこでこのビデオを多くの人に紹介することが出来たと思う。
伊江島における反戦運動を描いた「教えられなかった戦争~沖縄編」
小学生が歴史に向かおうとする演劇を記録した「ガジュマルは生きている」
そして戦争や開発による大がかりな環境破壊などが起きる理由を考えた、
文明的な観点から捉えた「アボン」と歴史認識による「チベットチベット
これらを繋ぐ糸として「懐かしい未来:ラダックから学ぶ」を上映した。

こうしてラダックは本としても映画としても大切な作品になった。
それを今思い出しながら、このブログにもここに記事を残しておく。
考えてみれば、ここ4年間には僕個人も世の中も大きく変わった。
80年代前後において、シュマッハー、イリイチバシュラールなど、
数多くの先進的な知性が解き明かしたものは、今少しずつ具現化して、
問題としても希望としても新しい社会を生みだしてきているように見える。
あと10年もしないうちに人類史的にも大きな変化が訪れるのかもしれない。