「ロード・オブ・ウォー」

「ターミナル」や「トゥルーマン・ショー」を監督した、
アンドリュー・ニコル監督による社会派ハリウッド映画。
実在した武器商人を描いた「ロード・オブ。ウオー」を見ました。
予告編を見て面白そうだと思い、すごく期待していたんだけど、
まあ、これがハリウッド映画の限界かな、と思ってしまいました。

武器商人ニコラス・ケイジが演じたユーリー・オルロフの、
淡々と武器を売りさばいていく姿は恐ろしいのだけど、
巻き込まれて身を滅ぼす弟のヴィタリー(ジャレッド・レト)が、
もうすこしちゃんと描かれていれば内容に深みが出たと思う。
憧れだった妻との生活の破綻や、逮捕されない経緯なども、
類型的すぎて面白みを感じる何かが掛けていると思う。

大量に生産して売りさばかれ、転売される武器のことを、
ここまでリアルに面白く描いたのは興味深いのだけど、
その時点で終わったような、何か物足りなさを感じる作品だ。
これがドキュメンタリーであれエンタテイメントであれ、
いずれにしても何かが足りないと思わされてしまうのはなぜだろう?
この主人公の感覚に共感できないからかも知れないね。

弟を死なせたことも、妻が家を出ていってしまったことも、
ユーリーは防ごうと思えば防げたのに防がなかった。
お金に負けた男の姿には同情する気にもなれないし、
そうなることがわかっていただろうに付いていった弟が、
可愛そうであるとともに、やはり同情する気にはなれない。
人間としての誇りを求めた妻も含めて全員が敗者に見えてしまう。

毎日世界のどこか、弱い人がいる場所で大量殺戮が行われ、
それで儲けているヤツが必ずいるのにとわかっていながら、
それを止めようとしないアメリカの方針も自明のことだとして、
さて、「それをどうすればいいか」が問題なのに、
この映画はワンテンポ遅れている気がしないでもない。
できればこの先こそ見たいと思うのが正直な気持ちでしょう。