記憶を失うと魂は?

私の頭の中の消しゴム」って映画があって、
それを見たときに、気になるセリフがあった。
こまかい言い回しまでは覚えていないけど、
ヒロインのソン・イェジンが自分の病気を知って、
次第に失っていく記憶のことを恐れるときのセリフ。
「記憶を失うと、魂も失ってしまう」と嘆いていた。
はたして、魂は記憶と共に失われるものなのか?

僕らは普段、魂や霊性の話をするときには、
それを人の一生を超えて存在するもののように話す。
だからこの場合には、「記憶を失っても魂は不滅!」
と言って良さそうなものなのに、違う気もする。
確かに、忘れてしまえば存在しないも同じに思える。
そもそも、存在するとは何を意味するのだろうか?

ここにこうして僕が生きていると証明できるのは、
同じように誰かを必要としている人間だとすれば、
誰かが知っていてくれるから僕が存在している。
つまり、誰も知らないなら僕は存在しない?
魂だって、知ってくれる者がいるから存在する?
それを知っているのは自分の記憶に他ならない?
とすれば、確かに記憶を失えば魂を失うのかも。
そう考えてくると、不滅と思われる魂の存在さえ、
なにやら微妙なバランスの上にある幻に思われる。

まあ、それならそれでかまわないと思うけどね。
だってさあ、僕がここにこうしているって事は、
それだけで十分に驚くべき奇蹟であるし、
魂や霊性だってこの奇蹟と共にあるものだろう。
個々人の存在と共にあるのが魂の有り様だと、
僕らは無意識に知っているから、記憶を失うと、
そのまま魂も失ってしまうと感じるのだと思う。