「ザ・コーポレーション」

これは、日本では渋谷のアップリンクだけで、
ロードショウ公開されるマイナーな映画ですが、
現代社会の根本的な問題点を明確に示している点で、
他には類を見ない刺激的な映画と言っていいでしょう!

映画はマイナーですが、参加している人たちは一流で、
僕が尊敬するノーム・チョムスキーを初めとして、
マイケル・ムーアナオミ・クラインなどが案内役。
同時進行で執筆されたジョエル・ベイカンの著書は、
「わたしたちの社会は企業に支配されている」と、
この副題の通りに現代社会のカラクリを暴くものです。

著書とは同じ内容ながら、この映画は映像を活かし、
原作にはないヒーローを仕立てて話が進みます。
ドキュメンタリー作家ジェニファー・アボットと、
メディアを通じて原子力、貧困、人種、宗教など、
幅広い社会問題に挑戦し続けるマーク・アクバーが、
一つの優れた映像作品としての映画に仕上げている。

しかもこの映画に登場する数多くの人たちを見ると、
ロイヤル・ダッチ・シェルの前会長スチュアート卿や、
グッド・イヤー・タイヤ会長のサミール・ジバラなど、
巨大企業のトップにいる人々からもインタビューを得て、
あるいは企業利益と闘った人々からの話しも交えて、
双方の責任有る立場に矛盾しない真実を引き出している。
その真実とは、企業利益が社会を支配している現実です。

そこで企業とは何かと考えると、恐ろしい現実が見える。
多くの社会は企業に法的な人格を認めることによって、
企業の活動を人の活動と同じように認めていますが、
企業がやっていることを人間の行為として診断すれば、
「利益のために嘘をつく」「人間関係が維持出来ない」
「他人への思いやりが無く」「罪の意識がない」等々、
サイコパス人格障害)状態でしかないのです。

自由、平等、正義など憲法で規定されている権利は、
一人一人の人間にではなく政府や企業に適用されて、
人間本来の理想を守ることができなくなっている。
その理由は企業の性質を理解していないからだと示す。
アクバーの目論見は、「普通だと思われていることが、
実は普通じゃないかもしれないと気付かせる」ことでした。

こうして世界屈指の頭脳が集まって制作が進み、
出来上がった作品は、我々に多くのことを問い掛ける。
今まで疑問を抱いたことのない企業の本質を問い、
その支配に身を任せた社会と人間生活の危うさを示す。
戦争や環境破壊の悲惨さを訴える映画は数多いけど、
その原因に迫ることができた映画は初めてかもしれない。
こんな映画を僕らは待っていたと言ってもいいだろう!

ひたすら利益を追求し続けるアメリカや日本では、
この映画は見る機会さえ限られてしまっているけど、
カナダやヨーロッパでは既に多くの賞を受けて、
広く人々の支持を受けている作品でもある。
これこそ新しい時代の幕開けになる映画だと思う。
ぜひ少しでも多くの若い人に見てもらいたいですね♪