「霧の中の風景」

アンゲロプロス監督の特集をやっていたので、
思わず時間調整をしてイオンまで見に行った。
三日間限りで、毎日16時から一回きりの上映だ。
先日の「エレニの旅」と同じ、観客は10人ほど。

たしかに一般受けするような映画ではないけど、
やっぱりこの2時間以上の上映時間が長いと思わない、
なぜともなく映画の世界に入ってしまうから不思議だ。
内容としては、父親のいない姉弟のふたりが、
父親に会いたくて家出をして旅をするロードムービー
その中で様々な人に出会い、何かを学び取っていく。

そしていつものようにこの監督は独特な映像を見せて、
それらのシーンは計算し尽くされたアングルを持つ。
大きな手がヘリで持ち去られる有名なシーンでも、
よく考えてみれば、海から出てきた巨大なオブジェが、
あんなに都合よくヘリで持ち去られることは無理だ。
警察から逃げ出す雪のシーンだって不自然だろう。

ところがこの映画では、不自然さが気にならない。
むしろ二人の、あるいは観客の心象風景となっている。
その風景からさえ僕らは監督のメッセージを受け取る。
難解なアンゲロプロス監督の作品としては、
比較的わかりやすい原点となる映画とも言われるが、
それは主人公がまだ子供だからかも知れない。

どこへ向かうとも知れない人間の宿命を描いて、
この監督はあらゆる作品で旅を続けているのだろう。
行方は誰にもわからないのだけど、彼は知っている。
その不安を共有するところから何かが始まると。