「鎌倉ものがたり」

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西岸良平の作品「鎌倉ものがたり」を原作として、
山﨑貴監督による映画ですから、面白くないはずはない。
と言うわけで、劇場でもヒットしたようですし、
すでにテレビで上映された、「Destiny 鎌倉ものがたり」です。
テレビのない我が家では、先日ビデオショップで見つけ、
今回ようやく見たのですが、なるほど面白かったです。

西岸良平の世界は、独特にノスタルジックですが、
けっこう実際の昭和の雰囲気があり、僕らには面白い。
違う世代の人が、この映画を見てどう思うのか、
と気になるところですけど、配役がまたうまいですね。
飄々と怪演する堺雅人と、こんな娘がいれば良いと思わせる、
年の差女房の高畑允希も、はまり役だったと思う。

堤真一の怪物も、奇妙に当たり前に見られたし、
田中泯の貧乏神に至っては、うってつけだったかも知れない。
そして今をときめく、安藤サクラが演じる死神なんかは、
演技しているとは思えない、自然体がよく似合っていました。
そしてキーポイントとなる、江ノ電の風景も良いし、
CGの黄泉国も、なんだか自分が見てきたような気にもなる。

人間の輪廻転生さえ、当たり前に描いているのに、
物語の全体のレトリックに似合って、違和感がないのです。
日常生活をベースにしながら、ちょっと逸脱していく、
このペースも緩やかで、見ている方も徐々にのめり込んでいく。
実は荒唐無稽の話しなのに、僕らの周りには満ちていた世界観で、
それをおどろおどろしいのに楽しく、美しく描いている。

昭和生まれの僕らにしか、通じない感覚かと思ったら、
6歳の娘が珍しく興味津々で、2回3回と自分で見ていました。
彼女にしてみれば、本当の世界と嘘の世界の違いが、
うまく分からないほどに、これは現実に見えたのでしょう。
ドキドキはらはらしながらも、楽しんでいたようで、
確かに世代を超えて広がる何かが、この作品にはありそうです。

あまりにもサラリと登場する、様々な怪物たちは、
それぞれ古くからの物語に出てくる怪物で、ポッと出ではない。
その都度説明していたら、この物語は延々と長くなりそうな、
そんな要素を含みながら、魂と肉体の話しまで違和感なく出てくる。
豚頭鬼、象頭鬼、赤い手の魔物なども、説明すれば切りが無く、
そんな話しは、映画を見終わってからでも楽しいでしょう。

これはたぶん、日本人の文化にしか分からない要素で、
日本の時代劇と同じように、西欧の人を驚かすかも知れない。
元々はインド、中国から伝わったものをベースにしながら、
長い年月を経て、日本独自の物にしていった一つの文化が基にある。
こんな作品がヒットして、これからどんな作品が生まれるか、
また新たな興味を感じさせる、上質なエンタティメントでした。