忖度させられた人たち
この一週間ほど、日々のニュースのラインアップを見れば、
毎日必ず現れるのが、日大アメフト部の悪質タックル問題でした。
日大の宮川選手が、関学の学生に対して振る舞った悪質タックルは、
監督やコーチの指示だったのか、彼独自の判断だったのかどうか。
少なくとも宮川選手自身の会見を聞くと、指示だったと思われるし、
指示無しであんなプレイが、行われたとは思えないのです。
しかし当の内田正人前監督は、そんな指示はしていないと言うし、
直接指示をしていたコーチさえ、選手が誤解したようだと言っています。
監督もコーチも明確に指示していないのに、指示されたと受け止めた、
こんな話しは最近どこかで聞いた気がしますが、いわゆる忖度と同じです。
明確な指示はしないけど、当事者には特定の指示が伝わるように、
「相手に何が言いたいのかを考えさせる」ことで、一定の指示をする。
宮川選手は、やってしまったことを後悔して詫びたわけですが、
いわゆる官僚たちは、詫びるどころか言い訳の上塗りをしています。
日大の監督やコーチは、選手を追い込んだのは自分の責任だとしながら、
指示はしていないと言うし、コミュニケーション不足だったと陳謝している。
物事を明確にしないことで逃げ道を作り、うまくいけば自分の手柄で、
失敗すれば「自分は指示をしていない」、とおきまりの逃げ口上を言う。
独裁者にはありがちで、国政のアベノ独裁も日大アメフトの内田体制も、
一強独裁によって、誰も異を唱えられずに忖度だけがあったのです。
あくまでも明確な指示はしないで、忖度によって自主的に動かせながら、
その責任はすべて実行者に取らせるという、同じ無責任な体質です。
そのように見てくると、言い訳と嘘の上塗りばかり目立つ中で、
宮川選手の言動だけが、真っ直ぐに自分を見詰めていたように感じる、
もうやり直しの利かない泥沼の中で、保身しか頭にない官僚に比べ、
弱冠20歳の宮川選手の反省と、真実を求める態度には好感が持てました。
こうした若い学生を苦しめたことで、監督やコーチも苦しんでおり、
その点で光明を求めたい所ですが、この人たちも保身が優先しています。
学生の指導者であれば、未熟な学生を擁護しながら育てる立場なのに、
悪質なプレーを忖度させておきながら、指示していないと言い張るしまつ。
どこかの国の政治家は、官僚にとんでもない悪質仕事をさせながら、
そんな指示はしていないだなんて、卑劣にも程があるというものでしょう。
しかしこの国政茶番劇には、大学生のような真摯な人間性を見せる人も、
出てくることなく、この国の閉塞感は高まるばかりなのです。
この時期に現れたアメフトの悪質タックルと、その後のドタバタは、
この国の政治がいかにお粗末かを、よくよく教えてくれるのです。