「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

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昨年公開された、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」を、
先日ようやく、レンタルで見ることが出来ました。
第41回日本アカデミー賞にて、優秀作品賞をはじめ、
優秀監督賞、優秀脚本賞、優秀美術賞、優秀助演男優賞
そして優秀助演女優賞を取って、大人気となった作品です。

東野圭吾原作で、本が既に1000万部突破と言いますから、
ヒットして当然の映画でしょうが、映画の質も良かった。
僕は原作を読んでいないので、映画の筋が最初はわからず、
見ているうちに、少しずつ全体が見えてくるのも面白かった。
矢口敦也役の山田涼介ほか、若い役者も魅力的に動いて、
作品の中での役割も存分に熟し、見ている者を引き込みます。

僕個人的には、小林翔太役の村上虹郎に惹かれますが、
山田涼介とはまったく違う個性で、この二人が良かったし、
さらに寛一郎が加わって3人であることで、落ち着きが出る。
そして魚屋ミュージシャンの林遣都や、歌手役の門脇麦
萩原聖人西田敏行による、浪矢父子も違和感がなかった。
つまり一件バラバラな出演者たちが、誰にも違和感がなくて、
全体をいかにも一つの作品として、表現していたのです。

諸個人の様々な行為が、全体として繋がっていることで、
誰も思いもしなかった奇蹟が起きる、と言う内容から、
僕は見終わる前から、「クラッシュ」を思い出していました。
2006年4月に観た映画ですが、この内容も同じように、
様々な人の思いや行動が、絶妙に影響し合って奇蹟を起こす。
その必然として起きる奇跡に、ボロボロと涙が出ました。

ただし「クラッシュ」は、リアルな社会現象を描いたのに対し、
「ナミヤ雑貨店の奇蹟」は、時代を超えていることから、
一つのファンタジーとして、成り立っている感じです。
どちらが良いとは言えませんが、好き嫌いで言えば、
僕は「クラッシュ」の方が、先に見たせいか印象深い。

ちょうど12年前に見たことも、何か新しい時代を思わせ、
もう一度「クラッシュ」を見てみたい、と思ってしまいました。
僕らは目に見えない糸に繋がれて、多くの人と関わりますが、
どちらが誰を動かしているのではなく、お互いが連動している。
何か善きことをしたからと言って、良いことがあると限らないけど、
世界は必ず繋がっているので、どこかに善いことが生まれてくる。

こんな当たり前のことを、僕らは普段忘れているのですが、
何かを表現しようとする者にとって、これは大切なことなのです。
わざわざ表現されるものには、表現されるに相応しい理由があって、
作者は「表現されるべきもの」のために、小説や映画を作ります。
役者も製作スタッフも、この一点さえ理解していればいいので、
こうした優れた作品には、違和感がないのかも知れません。

またいつかこのような作品に巡り会えるか、どうなのか、
長く生きる楽しみの一つは、そんな出会いかも知れません。
すべては繋がっているし、僕らはみんな生きているから、
僕らの日々の暮らしは、どれ一つとして無駄なものはない、
そんな当たり前のことを、この作品は思い出させてくれました。