映画 「ごはん」

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日本映画史上において、最も美しく水田の風景を描き、
最もリアルに米作農家を描いた、エンタテイメントムービー。
と言うキャッチフレーズで、昨年11月に公開された映画、
「ごはん」が、砺波の子供曳山会館で上映されました。
一体どんな映画なのか、気になって上映会へ行きましたが、
まさしく今の米作農家が、過不足なく描かれていました。

日本の米作り就労者は、平均年齢が65歳を超えており、
農作業の機械化によって、辛うじて維持されている現状がある。
そうした事情から、やむなく30軒の田んぼを預かっていた、
米作り農家のご主人が、突然倒れて亡くなってしまいます。
急遽家に帰った娘のヒカリは、すでに預かっている田んぼを、
怪我をして農作業の出来ない源八が治るまで、面倒見ることにする。

そこから米作りの一夏が始まり、観客はヒカリと一緒に、
米作りの体験をしていくのですが、次々と問題が起きてきます。
水が涸れたり、余所の田んぼの水を奪ってしまったり、
ヒカリが熱射病で倒れたり、嵐で稲が倒れてしまったり・・・
それでも源八を始めとして、周囲の人の力を借りることによって、
夏の農作業はなんとか終わり、秋の収穫を迎えるのです。

しかし肝心の稲刈り作業で、トラクターを壊してしまい、
絶望的な気持ちで、鎌で手狩りの稲刈りをするヒカリでした。
そこへ次々に助っ人が現れ、稲刈りも順調に進んでいって、
なんとか無事に新米を収めることが出来た、と言うお話です。
物語だけをいえば、これだけの展開でしかないのですが、
これが不思議と面白くて、見ていて飽きない映画だったのです。

自分も米を作っているから、わかる部分もあるでしょうが、
米作りを知らなくても、映画の内容はわかりやすくて面白い。
ヒカリ役の沙倉ゆうのも親しみやすく、魅力的だったし、
相手役とも言える源八は、もともとお笑いの芸人なのだとか。
そして脇役には日本一の斬られ役、福本清三がいるのは、
安田淳一監督の、人柄による人脈と言えそうです。

上映会には主演の沙倉ゆうのさんと、監督が見えていて、
30分ほどのトークがあって、これも面白かった。
最初は米作りの短編の予定が、良い作品になると感じて、
最終的に長編娯楽作品になったため、撮影に4年掛かったとか。
撮影は7月から9月しか出来ないので、これを3年やって、
少しずつ必要なカットを入れ、完成したのだそうです。

監督の話で印象的だったのは、役者のいない田んぼの撮影で、
何度も何度も稲を美しく取ろうと努力した、そのけなげさがいい。
田んぼの美しさは、まだまだこの程度ではないと思うけど
その美しさを映像で表現しようとした、その努力は評価したい。
美しい田んぼの風景と、親しみの持てる主人公ヒカルがいて、
そこに人の良い若者源八がいて、作品のエンタメ度は高いのです。