「PK(ピーケイ)」

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東京などの都会にいれば、こんな映画も観られるでしょうが、
田舎暮らしの欠点として、メジャーでない映画は見られません。
最近は定期的に雑誌を読むわけでもないので、映画「PK」のことは、
まったく何も知らないまま、TSUTAYAのレンタルで見つけました。
「きっと、うまくいく」で、大学生を演じたアーミル・カーンと、
ラージクマール・ヒラニ監督の名コンビですから、期待も高いのですが。

その期待を裏切ることなく、また絶妙に面白くて内容の質も高い。
ヒロインのジャグー役を演じる、シャー・ルク・カーンも魅力的で、
さらに彼女の恋人が、イケメンを絵に描いたようにカッコいいのです。
それだけでも、恋物語として成り立ちそうな華やかさですけど、
主人公のPK(「酔っ払い」の意味)は、実は宇宙人だったりする。
そんな一見荒唐無稽な話なのに、物語は実にうまく出来ていて、
この宇宙人は、神の存在とは何かを真正面から問いただすのです。

あらゆる宗教が渾然と存在して、それが人々の暮らしを拘束する、
インドだからこそ生まれた作品で、宗教の矛盾を問いただしてもいる。
裸で地球にやってきたPKは、帰りの宇宙船を呼ぶリモコンを奪われて、
それを探し出すために、人間に紛れて生活を始めるのですが、
願い事は神様が叶えてくれると聞いて、あらゆる神にお願いする。
それぞれの宗教の作法に従って、あらゆる苦難を克服する。

だけどいくら頑張っても、PKはリモコンを見つけられないどころか、
願いを叶えてくれる神様にさえ、会うことが出来ないという毎日を過ごし、
神様を探して、手当たり次第にビラを配るようになっていたのです。
それを見たジャグーは、この人には何かありそうだと思って声を掛け、
何やら不思議な力を持っていると知って、本格的な取材を始めます。
PKは手を握ることで、相手のメモリーを写し取ることが出来るのですが、
それを知ったジャグーは、宗教家と対決させることを企画するのです。

実はジャグーは、有力なテレビ局の番組制作スタッフの一員で、
何か視聴者の心を捉えるような、新鮮な材料を探してもいたのです。
物語の詳細は明かしませんが、地球上の文化に染まっていないPKは、
様々な宗教、あらゆる宗教は人間が作った装飾だと見抜きます。
それぞれの宗教的証である、服装や祈り方や儀礼の数々は、
人が勝手に作り上げて、人を支配する道具に使っているのだと見抜く。

インド映画らしく歌と踊りがあって、民族衣装も多種出てきますが、
それらはみんな、何ら本質的なものを現すわけではないと見抜くところ、
多くの人が共感して、教祖や導師に疑問をぶつけるようになる。
そしてクライマックスでの、PKと導師の対決で明らかになること。
思い当たることが確かにあって、それを次々に辿っていくと、
僕はすっかりツボにはまって、思わず泣き出してしまいました。
最後にこんな感動が待っていたなんて、脱帽せずにはいられません。

映画の公式サイトを見ると、作品の根底に流れているのは、
「きっと、うまくいく」と同じ、国境も文化も越えた人間共通の思い、
「常識にとらわれずに、わが道をいけ」というメッセージだとあります。
楽しく笑って馬鹿にして、最後に歓喜の涙をこぼさずにはいられない、
これこそエンタテイメントと言える、最高の一本だったと言えます。
まだ見ていない人は、ぜひ一度見ていただくことをお勧めします。