今の自分にできること

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あけまして、おめでとうございます。
イソップ通信、今年もよろしくお願いします。

我が家にはテレビがありませんが、元旦に妻の実家にお邪魔して、
そのままお酒を飲んで泊まったので、夜中のテレビを見ました。
NHK Eテレの「新世代が解く !ニッポンのジレンマ」と言うもので、
1975年以降の生まれ以外は「立ち入り禁止」と言う番組でした。
これからの日本を担う若い人たちが、何を考えているのか、
興味深く思いながら最後まで見ましたが、なかなか面白かった。

僕より30歳近く若い人たちが、それも各分野ですでに活躍している、
いわゆる新進気鋭の人が考えている、ジレンマとは何か?
話を聞いていると、何をジレンマと受け止めているかによって、
未来に対する立ち位置も違うし、楽観悲観も違ってくるようです。
ただ全体的な印象としては、現代日本社会の様々な考えが出て、
逆に驚くような意外な考え方がなかったので、ちょっと落胆。

大澤聡さんの現状肯定論は、昔からあった「勝てば官軍」だし、
安田洋祐さんのミクロで見れば良い、と言うのも個人の問題になる。
三牧聖子さんのアメリカ覇権に対する考えも、日本が問われているし、
石山洸さんによる人工知能と人類の幸せの問いかけも、昔からある。
山善宏さんは分断した社会として、統合しないネットワーク化を提唱、
ライラ・カセムさんは、日本人は何がしたいのか分からないという

そして阿部敏樹さんは、社会の分断・断絶をどうつなぎ合わせるか、
佐藤信さんは公私の切り分けの是非を問い、ボーダレスを指摘。
堀口美奈さんは一人一人の差別化が進んでいる、と見なしますし、
文月悠光さん、言葉は何を選んでも絶対がない点から考える。
さらに福原志保さんは、場を開くアートの重要性を説いて、
MCの古市憲寿さんは、力みすぎないようにと助言をしています。

こうした人たちの真剣な議論は、面白くないはずはないのですが、
最新のテーマで議論していながら、10年前とあまり変わらない。
なぜこんなことになるのかと考えると、方向性がないからじゃないか、
どのような未来に向かっていくかの議論がないまま、現状を議論しても、
なぜ議論をするのかさえ、分からなくなってくると思うのです。
そして番組の最後に近づいたところで、物語性の話が出てきました。

どんな個々の問題や主張であっても、他者がいる限り伝達が必要で、
この伝達は価値観の議論だけでは難しく、対立になってしまう。
違う価値観を主張するだけでは、対立になってしまうものを、
アートや芸術によって、あるいは哲学によって緩く融合させる。
何か対立が起きそうなときは、時間を掛けて理解することが必要で、
現代人は忙しすぎるのが、とても危険に思われるのは僕だけじゃない。

僕は2000年に仕事を辞めて、立ち止まってみたわけですが、
その後の活動の中から、言葉だけではない自然農に出会いました。
僕にとっては、身体知と社会的知がうまく合致する考え方で、
その後の議論や実践によって、今は確固たるものになっています。
今回のゲストを見ていても、議論することを生業にしている人より、
議論と生業を別にしている人の方が、深みがあったように思うのです。