ゲゼルとシュタイナー

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エンデの遺言」から、僕らは多くのことを学んでいますが、
その中心的なテーマは、お金の問題と言っていいでしょう。
果てしなく増殖するお金が、いかに多くの人を苦しめ、
人類の未来を危うくしているかは、僕も何度も書きました。
しかし現代人の多くは、いまだにこの危うさに気づかずにおり、
経済は拡大すればいい、と信じているように思われます。

それでもある一定の人たちは、拡大を続ける経済に疑問を持ち、
地域通貨などによる、拡大しない循環型経済を求めています。
それはなぜなのか、なぜ拡大し続ける経済が危うくて、
僕らは何に疑問を持ち、どう変えていけばいいと言うのか。
この問題を考えたエンデが参考にしたのは、ゲゼルだったことは、
すでに紹介(↓)してありますので、参考にしてください。

さて今日ご紹介するのは、同じ時代を生きたもう一人の人物で、
人智学協会を創設して世界に広めた、ルドルフ・シュタイナーです。
シュタイナーは1861年に生まれ、1925年に64歳で没し、
ゲゼルは1862年に生まれ、1930年に68歳で没しています。
すなわち同じ時代に生きた二人であり、考えも共通していて、
シュタイナーはゲゼルの自由経済運動を、明確に同意している。

ゲゼルの代表作には、「自然的経済秩序」がありますが、
シュタイナーは「老化する貨幣」を唱え、この点でも共通します。
これはどちらも、自然界のものは時間と共に減価するのだから、
お金も減価しないとバランスが崩れる、とするものですが、
実際には利子が付くことで、お金は時間と共に増えるのです。
これをどのように変えて、お金も減価する仕組みを作るか
ゲゼルの通貨は、こうした発想から生まれたものでした。

その後シュタイナーは、特に教育の分野で有名になって、
いわゆるシュタイナー教育が、世界中で試みられています。
社会を政治経済だけで考えずに、精神生活からも考えますから、
精神生活には自由が、政治・法的生活には平等が、
経済生活には友愛が必要だと説いて、実践を求めたのです。
僕の友人はその勉強のために、現在ドイツへ行っていますが、
シュタイナー教育に関して、僕は詳しくないのでここには書きません

ただどうしても押さえておきたいのが、お金に対する考え方で、
エンデはこの二人から、増殖するお金に対する疑問を得たのです。
二人は第一次世界大戦後すぐに、お金の問題を扱うようになり、
増殖するお金に対して、抑制する必要を説いていたことがわかります。
お金をどのように抑制するか、いくつもの試みがありましたが、
その成果のいくつかが、エコバンクや地域通貨として知られている。

しかし1971年に、アメリカが金本位制を廃止してから、
世界中のお金は暴走を始めて、コントロールできなくなっている。
天文学的なお金を持つ人が出る一方で、貧富の格差は拡大し、
貧しい国は飢えに苦しんで、新たな紛争の種が火を噴いているのです。
もはやお金が裕福であることは、犯罪であるに等しいような、
おかしな状況が現代である、と言わざるを得ないかのようなのです。

僕らは現在多くの社会問題を抱えていますが、その中心には、
エンデが指摘したとおりに、お金の問題があるのは間違いありません。
金融界の内部から、こうした問題を検討することは無理のようで、
僕らはいったんお金の価値観を離れ、謙虚に人間とは何かを考えることで、
まったく違う視点から、お金の問題を考える必要があるのです。
ゲゼル理論でさえ、子育てに対するサポートの必要が説かれていますが、
僕らはようやく、そうした最低限の社会保障に辿り着こうとしている。

お金を増やさずに幸せを増やす、そうした発想から生き方を考え、
僕らは僕らで、自然農による助け合いの暮らしを始めています。
エコバンクや地域通貨、そのほか様々な助け合いを組み合わせることで、
僕らの毎日の暮らしは、魔法のお金に頼りすぎることなく、
すべての人が幸せになる道が、必ずあると思うのです。