20年掛けた土地利用

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最近読んだニュース記事に、嬉しいものがありました。
中国の山東省莱西市で、日本の大手企業が借りた土地で、
驚きの土地利用があった、と報道されていたのです。
詳しく読んでみると、1ヘクタールの土地を20年契約で借りて、
何をするのかと見ていたら、5年間放置されていたというのです。

地元の人たちは訝しんで、地中の宝物でも探すのではないか、
と噂されていたようですが、5年後から利用が動き出す。
まず牛を飼い、その糞で土壌を改善させて、無農薬農作物を栽培、
それを乳牛に食べさせて、品質の高い牛乳を生産するようになった。
と言うことは、どうやら最初の5年間は土壌を回復させて、
自然農ができる土地にしてから、農作物を作り始めたようです。

僕らも自然農をするに当たって、土地の問題は大きくて、
それまで近代農法で使われていた田畑は、間違いなく疲弊してる。
この土地を回復させるまでに、どうしても4~5年掛かるので、
この間をどうやって乗り越えるかが、一つの課題なのです。
資金力のある日本企業は、中国の土地を大きく借りて、
10年後を見据え、こうした自然農法的な手法を使ったわけです。

今や日本国内において、農地を5年間遊ばせておけば、
耕作放棄地として問題視され、使い手はいなくなってしまう。
お役所をはじめとして、あらゆる農業関係団体では、
少しでも土地を遊ばせないために、アイデアを尽くしている。
だけど自然農的考えで言えば、この自然に任せた放置期間によって、
健康で美味しい農作物が作られる、という循環なのです。

日本では効率ばかり求められ、選択されない土地利用方法を、
資金力を使って広い海外に土地を求め、実現しているのはさすがです。
こうした発想が、どこかで僕らの自然農と繋がっていることは、
彼らが意図したかどうかは別として、やっぱり嬉しいのです。
借地20年の最初の10年では、利益は上がらなかったでしょうが、
後半には多くの利益が上がり、信頼も勝ち取っていったわけです。

狭い国土の日本では、自然農的な土地利用は贅沢すぎて、
なかなか行政もわかってくれないし、採用してくれません。
だけどその価値を知る人はいて、国外で有効利用し始めているなら、
やがては国内でも、長い目で見て良い選択がされるでしょう。
10年後20年後を見据えた企画が、その土地を豊かにするのです。