ゲゼル理論から百年

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お金も一般の商品と同じように、時間と共に減価すべきだとする、
いわゆるゲゼル理論が発表されたのは、1916年のことでした。
今年はそれからちょうど百年になりますが、この間に何が起きたかは、
生活の商品化と貨幣経済グローバル化、そして貧富の格差です。
こうした事態を予見し危惧したシルビオ・ゲゼルは、代表作となった、
「自然的経済秩序」において、減価する貨幣を提唱しました。

生産物が10増える間に、通貨が100倍も増えてしまえば、
当然のことながら、物価も100倍になってもおかしくありません。
ところがあらゆる商品は時間と共に劣化するのに、お金だけは劣化せず、
それどころか利子によって増えますから、物価は下がってもお金は増える。
この繰り返しによって不自然な通貨量は増え続け、経済は膨らんで、
気がつけば通貨構造による億万長者が、世界中に君臨し始めたのです。

こうした不公正をなくすために、ゲゼルが提案したことは、
★、土地の国有化および国の地代収入の母親年金としての分配。
★、定期的に持ち越し費用が発生する通貨の導入。
という2つのことで、現代でも考慮するに値することなのです。
百年前には女性の社会的地位も低かったのに、子育て支援を国家に求め、
その財源を国家の土地所有による、土地使用代金だというのです。

さらに通貨そのものも、商品と同じように劣化する仕組みを作り、
貯め込んでは価値が目減りし、早く使いたいと思うように仕向けます。
こうすれば少ない通貨量でも流通は進み、経済は活発になって、
一部の富裕層が通貨を貯め込んで、格差社会になることもありません。
現代社会が持つ問題であるところの、グローバル経済による貧富の格差と、
子育てによる社会的弱者の発生という、二つの問題が解決できる。

金本位制による通貨量の抑制がなくなり、ヘッジファンドなどによって、
果てしなく膨らむ貨幣経済ですが、これは実勢経済とは関係がない。
ミヒャエル・エンデが指摘したとおり、貨幣には2つの側面があって、
以前からの流通交換価値としての通貨と、蓄積される資産があるのです。
有利子で蓄積される貨幣は、むしろ減価すべきではないのか、
人類の英知はそう提唱しますが、実効支配は有利子を貫きます。

政治経済社会の実行支配者、いわゆる実力者と言われる人たちは、
自らがどうして実力者なのかを知っているので、その秩序を壊したくない。
だけど武力の実効支配が、歴史と共に効力を失ってきたように、
通貨による実効支配も、やがてはその効力を失っていくことでしょう。
問題はおそらく、そのためにはまだ長い歴史を必要とすることで、
これから先百年が過ぎて、人々がどれだけ目覚めるか程度のことなのですが・・・

あんがい近い将来に、変化が起きないとも限りません。