手遅れになる前に

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日本中で人口減少が進み、空き家が目立って増えていますが、
それでも新築は増え続けて、核家族から独居の人が増えています。
ともかくおカネを稼いで、稼いだお金の使い道はと言えば、
一番高価な物は家ですから、これ見よがしに家は新築したいのです。
その結果ますます空き家は増えて、行政は対策を迫られますが、
古い家をそのままにしておけば、税金も安いのでそのままにします。

これでは町中に空き家が増えて、町は衰退してしまい、
なにしろ消費者がいないのだから、商店だって撤退していきます。
これをどうすればいいか、はやく町全体の将来像を確立させて、
市町村単位で動きやすいように、県や国の法令を整備する必要がある。
例えば町内の空き家は、必要であれば市町村が取り壊して課税し、
税金が払えないのであれば、さっさと公有地にしてしまえばいいのです。

もともと空き地の場所もそうですが、公有地にした土地は、
利用したい人に安価で貸せば、手入れをしてきれいにしてくれます。
それが10年続けば、手数料だけで払い下げてもいいでしょう。
利用されなかった土地は、翌年から大幅に税金を上げるようにすれば、
金儲けや資産増やしのために、土地を所有する人もいなくなり、
国土保全にも役立つし、ピケティの言う貧富の差も解消するのです。

国全体で人口が減る時代に、自分の地域だけ人口を増やしたいなんて、
虫のいいことを考えているよりは、人口が少なくなることを前提に、
どのようなまちづくりをすれば、人々が幸せになれるかを考えればいい。
そのヒントは、今よりも人口の少なかった昔を思い出せばいいし、
その当時から現代までに変化したもので、昔に戻せばいいものは戻し、
新しいやり方がいいものは、さらに新しくしていけばいいでしょう。

例えば自宅周辺の自然環境など、僕が幼かった頃には、
家の裏庭から背戸を抜けて、そのまま林の中へ続いていました。
多くの家では、人通りのある家表に面した側とは別の裏側に、
そのまま自然の田圃に面した、裏縁があったのです。
僕らはこの裏縁から遊びに出て、自然の中で遊んでいたのですが、
今後はこうした環境を、取り戻せる可能性だってあるのです。

百年前に高岡新報の記事を書いていた、井上江花と言う人は、
家の裏で園芸をやっていたところ、訪ねてきた人から、
「裏が開いていてよろしいですな」と声を掛けられます。
すると江花は、「自分は田圃に近い所に居なくては何となく
命が縮まるように思いますので、こんな家ばかり住まっています」
と答えるのですが、この感覚は実によくわかる気がするのです。

今では人の寿命は長くなりましたが、それは何か窮屈で、
もっと命がのびのびと居られるような、自然との関わりを増やしたい。
そう思ったときに、人口密度が減ることはむしろありがたく、
これからは自然との付き合いを増やして、人間とは距離を持ち、
のびのびと自由に暮らせる、またそんな時代になれる気がするのです。
もちろんそのためには、そのようになる制度と努力が必要ですが・・・