田舎への移住を望む若者へ

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内閣府が実施した世論調査によると、都市部で暮らす20代若者は。
その4割近くが、田舎への定住を希望していると出ていました。
定年退職する60代の移住は、以前から盛んだったのですが、
若い世代が田舎暮らしを望むのは、新しい流れと言えるでしょう。
ただし現実はそう簡単ではなく、都会者が田舎へ移住して暮らすには、
どのように収入を確保するのかが、最大の問題になってきます。

中には都会の人間関係に疲れて、田舎暮らしを望む人もいますが、
過去において多くの人が、都会へ移住した理由こそそこにありました。
つまり長いあいだ、田舎暮らしの人間関係を逃れて収入を求めた人たちが、
都会を目指した結果、現在の大都会への人口集中が起きたのです。
この事情は今も同じなのに、今では仕事さえあれば田舎で暮らしたい、
と考える若者が増えたのは、わかっていないだけかも知れません。

そもそも人間関係が煩わしいのは、都会でも田舎でも同じことで、
むしろ田舎の方が、人間関係そのものが生活のようなものと言えます。
田舎でうまく暮らしたいと思えば、プライベートなど無いも同然で、
都会のように、イヤな人とは付き合わないで生きられるわけでもありません。
集落にどんなイヤな人がいても、同じ集落の人間として付き合っていく、
この寛容さがなければ、田舎暮らしは楽しいものにはならないのです。

しかも安定した収入が保証される仕事は、ほとんどありませんから、
この時点で見る限り、若者は単なる夢を見ているだけだと言えるでしょう。
それでもこの調査では、田舎志向の若者が年々増えているそうですから、
どうして増えているのか、実現可能なことなのか考えてみたいと思うのです。
都会の若者が田舎へ移住する場合に問題となるのは、安定した現金収入の他に、
プライバシーのない人間関係と、生活インフラの問題があります。

そもそも安定した現金収入を考える場合、年金生活者でもない限り、
自然豊かで人の少ない地域に、条件のいい就職先を求めるのは難しいのです。
だけど発想を変えれば、たいした現金収入がなくても暮らせるのが田舎で、
おカネの不足分を補うのが、密な人間関係なのだと言うこともできる。
病院やコンビニなどの生活インフラも、おカネに頼るのではなく、
人間関係のネットワークに、求めて暮らすものなのでしょう。

長いあいだ日本の学校教育では、忠実に指示に従うのがいいこととして、
自分で物事を考えることを、わがままなことと考えるように育ててきました。
その結果として、ピラミッド型の会社組織などでは優秀な働き手でも、
誰からも指示されないことを、自ら判断して生きるのは苦手な人が多いのです。
あるいは多様な価値観の社会では、迷いが多くてすぐに自信を無くすから、
自由に生きることさえ、苦手な人が多いように見受けられます。

田舎暮らしとは、原則的に自立した自由な暮らしですから、
人から何か指示されて働くのではなく、自ら考えて働く必要がある。
家の周囲に起きる自然災害や獣害や、体調不良やケガなどへの対応も、
緻密な人間関係があってこそ、安心して対応していけるのです。
車やインターネットも使って、新しい田舎暮らしを考えることも必要ですが、
何が田舎暮らしの魅力かと考えるなら、多少不便でも自由に暮らせることなのです。