「レオニー」

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2010年公開の映画で、世界的に有名な彫刻家イサム・ノグチを育てた、
アメリカ人の母親、レオニー・ギルモアの生涯を描いた映画です。
こんな映画があることさえ知らなかったのですが、昨日のまちなみアートで、
たまたま瑞泉寺に張ってあったポスターを見て、興味深かったために、
急いで会場へ駆けつけて見たら、知り合いが企画した映画の上映会でした。

井波は彫刻で有名な町ですので、こうした名のある彫刻家の映画は、
確かに関心を持つでしょうし、女性監督の目線による映画というのも面白い。
会場へ駆けつけたところで、監督の松井久子さんともお会いしたのですが、
何しろ僕はまだ映画を見ていないし、松井監督を知らなかったし、
せっかくの講演会も聞けなかったので、残念ながら話はしませんでした。

そんなバタバタの状態で見た映画ですが、映画はよくできていて、
2時間の時間内に、レオニーの生涯がうまく凝縮されて描かれていました。
彼女が学生だった1900年頃から、当時の時代性を暗示させながら、
日本人の詩人(ヨネ・ノグチ)との出会いと、その後の暮らしを描きます。
しかし戦争が始まると、ヨネは妊娠したレオニーを置いて日本に帰ってしまい、
彼女は失意のうちに、ひとりで息子を生んで育てていくのです。

しかしあるときヨネはレオニーに、日本に来るように誘いの手紙を書いて、
彼女はそれを頼りに来日するのですが、ヨネは日本で妻をめとっていました。
日本で終戦と言われる1946年以前は、男に経済力さえあれば、
本妻の他に家を構えて妾宅とするのは、珍しいことではなかったのです。
しかしもちろん、そんな文化で育ったわけではないレオニーは受け入れがたく、
ヨネと別れて、イサムと二人で暮らすようになるのですが・・・

イサムに妹が生まれて、3人は海と富士山が見える高台に家を建てます。
この妹が誰の子であるかは、映画の中でははっきり言いませんが、
それまでの物語の流れから、ある程度はわまるように作られていました。
しかしレオニーは、誰が父親であるかを最後までうち明けません。
そしてイサムにはアメリカ行きを進め、日本ではなくアメリカの学校へ行って、
自らの才能を伸ばすように、できるだけの援助をするのです。

やがてアメリカへ戻ったレオニーは、息子と再会するのですが、
体をこわしてしまい、二人を置いて帰らぬ人となってしまうのですが、
すでに芸術家としての片鱗を見せていたイサムは、やがて才能を開花させる。
およそこんなストーリーで、見る者を飽きさせないのは監督の手腕です。
しかし残念ながら、これだけの物語に2時間はあまりにも短すぎる。

主人公がイサムではなく、レオニーなのだから仕方ないのですが、
イサムがレオニーから何を得たのか、その心の奥を描いて欲しかった。
イサムが感じたであろう母親の心と生き方に、何を見たのか、
もっと描いて欲しかったというのは、無理な望みだったのでしょうか。
彼の才能が何だったのか、母から何を得たのか知りたかった気がするのです。