ピケティ理論

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資本主義経済とは、格差を広げる仕組みであることは、
多くの人が感じていることですが、証明はされてはいない。
と思っていたら、フランスの経済学者トマ・ピケティさんが、
21世紀の資本論(Capital in the Twenty-First Century)』
と題する著書の中で、歴史を使って解明されていました。

と言っても、特別に新しい手法を使ったわけではなく、
現代の楽観的な経済成長を是とした、イモン・クズネッツと同じ、
先進国と発展途上国の、経済成長と所得分配のパターンを分析。
クズネッツは、有名なクズネッツ・カーブを示しながら、
「経済発展の初期には貧富の格差が拡大するが、
 発展段階が進むと格差が縮小する」と解説したわけですが、
ピケティはこの分析を、歴史的に特殊な時期でしかないというのです。

すなわちクズネック・カーブの分析は、1913年~1948年で、
この観測期間は第一次世界大戦から、第二次世界大戦後までの、
いわば戦争と戦争の間に起きた、特殊な時期だったのです。
これをさらに大きく長く、資本主義が始まった19世紀半ばから、
現在に至るまでのカーブ曲線を分析すれば、別のことが見えてくる。
ピケティによれば、格差が縮小したのは二つの大戦の時だけで、
それ以外の時期には、富と所得の格差は拡大してきたというのです。

二つの大戦の時には、戦争による物理的破壊で資本が減ったことと、
民間資本が国債購入で戦費調達に利用され、戦後にその国債が価値を失う。
あるいは累進課税の導入など、政治介入によって格差が縮まっただけで、
資本主義を放置すれば、さらなる貧富の差を拡大し続けるというのです。
多くの戦争論者が、戦争することによって平等な社会が実現する、
と思い込んでいるのは、必ずしも的外れではなかったのかも知れません。
しかし資本主義を放任する間違いがわかれば、打つ手はあるはずです。

興味深いのは、ピケティ理論がもて囃されているのはアメリカだけで、
ヨーロッパではさほどブームにもならず、静観されています。
考えてみればピケティの本国フランスなどでは、資本主義一辺倒ではなく、
社会民主主義などが指示されて、様々な政党が主張を展開している。
将来に対しても、必ずしも資本主義が進むことを望まない人が多くて、
アメリカのような貧富の格差にいたる要素は、比較的少ないのでしょう。
格差の拡大よりも、貧困層の失業対策の方が優先されているのです。

さてそれでは日本はどうかと言えば、アメリカに近い政策で、
資本主義を規制しないで伸ばそうとしますから、格差は広がりやすい。
しかし格差を広げないためには、戦争でもしない限り政策が必要で、
これからどのような政策ができるかが、重要になってくるのです。
累進課税のような富の再分配を、資産にもできるのかどうか、
こうした課題を抜きにしては、富の格差は広がる一方でしょう。