「日本人はなぜ美しいのか」

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世界の様々な文化や商品を、見比べた場合に、
日本のものは確かに美しさを感じさせる、何かがある。
それは自分が日本人だから、ひいき目で見ている所為なのか?
と思わなくもなかったのですが、それだけではない何か、
客観的な理由を知りたいと思っていたら、こんな本がありました。
曹洞宗住職で庭園デザイナー、枡野俊明さんが書かれた、
「日本人はなぜ美しいのか」というものです。

本の内容は、
第1章、外国から見たときの、日本の圧倒的な美しさとは
第2章、まわりにある、日本の美を再認識すべし
第3章、「禅の美」とは何か
第4章、日本人の「心」とは
と4つの章からなっており、特に第3章に書かれた、
七つの美に関しては、これを読むだけでも価値がありますので、
これだけは抜き出して、紹介しておきましょう。

禅の美とは、
(1)均斉がとれたときは、「終わり」である
(2)簡素であるからこそ、豊か
(3)「悟っている」自分に酔う人は美しくない。「枯高」を目指す
(4)たくまない。あるべきように。自然に
(5)「間」や「余白の空間」がなければ、日本の美は完成しない
(6)こだわらず、自由な心で生きる
(7)騒音や情報が消える、「静かな心」を持つ瞬間を得る
となっており、それぞれ具体的な説明が書かれています。

読んでいると、納得できることがたくさん書かれており、
禅宗独特の感覚が、この本の内容の骨子になっているようです。
枡野さんによれば、日本の美とは禅宗の美そのものであり、
これを解説するにあたって、いくつもの禅語がでてくるのですが、
墨絵の美しさも、禅の美によってうまく説明されています。
活花とフラワーアレンジを比べて、西洋と日本の美の違いを、
盛り合わせることとそぎ落とすことの違い、と説明されるのも、
読んでいて納得のいく、わかりやすい解説でした。

だいぶ前のこのブログでも、「放下着」のことを書きましたが、
西欧文化の求めるゴージャスと違う、日本文化独特の簡素さとは、
ありのままを受け止めてなお、どこまでそぎ落とせるかが観点でしょう。
明治から昭和に掛けての日本人は、まだこの文化が活きており、
物欲を排した「お陰様」「お天道さまが見ている」世界だったのです。
いや江戸時代の文化でさえ、宵越しの金は持たない・・・のように、
余計な材を持つことを、卑しむ心意気というものがありました。
それが現代では失われ、物とカネが日本社会を支配しているのです。

それでも枡野さんが言うように、日本人のDNAには、
いまだにこの「禅の美」を感じ取る、能力が潜んでいるのでしょう。
日本を日本たらしめているのは、この独特の美意識と感性で、
これがあるために、日本で作られたものは世界に信用があるのです。
水面に映る月を愛でて、それを生活の中に取り入れる感性を、
僕らは今の世代に絶やすことなく、伝えていくことで、
日本人としての誇りを、育てていきたいと思わされる本でした。