山代温泉・古総湯

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石川県の温泉には、有名なものだけでいくつもありますが、
加賀温泉と言うなら、主なものはそう多くありません。
その中の一つ山代温泉に行くと、中心地の目立つところに、
昔の建物や作りをそのまま再現した、古総湯があります。
再建されたのは比較的近年で、まだ新しいのですが、
外観も温泉内部も、明治の総湯をそのままに再現しており、
浴室の床や壁の九谷焼のタイルも、当時のまま復元したとか。

山代温泉の町並そのものも、湯の曲輪と呼ばれる作りで、
この総湯を中心に、ぐるりと取り囲むように宿や茶屋が並ぶ。
そんな古総湯に僕も入ってみましたら、今の温泉と違って、
ガランとした浴場には、お湯や水の蛇口もない簡素な作りで、
それどころか、脱衣所らしいものさえ別室にはなっていません。
この写真では左手が入口で、入って左脇の脱衣所は、
浴場との境さえ衝立一枚なので、湿気が立ちこめていました。

この写真は資料なので、全体がくっきりと見えますが、
実際には湯気が濃く立ちこめていて、湯船の向こう側さえ、
人の姿がぼんやりわかる程度の、湯煙の中なのです。
昔はそんな場所の一角で、手早く衣類を脱いで湯船に入り、
ゆっくり暖まったら、浴衣を身につけて休憩場所に移動する。
そして冷たいものを飲んだり食べたりして、のんびりする、
ってな具合に、温泉を楽しんだのだろうと推測できます。

湯屋の休憩場所は、狭い階段を上った2階にあって、
温泉卵やアイスクリームなどが、楽しめるようでした。
今は冬なので、古総湯の周囲は戸板で覆われていましたが、
たぶん夏などの暑い季節には、開け放たれるのでしょう。
四方が道路で、その向こうにお店や宿が並んでいますから、
のんびり手すりに持たれる、昔ながらの湯屋の風景が、
ここでは今でも、当たり前に見られそうなのもいいですね。

宿そのものは現代的に、豪華な中にも人出が減らせるように、
食事さえ部屋出しはなくなって、広いホールでバイキングです。
昔のように、宿へ着くと大勢の中居さんが並んで迎える、
そんな豪華なおもてなしはなくなりましたが、サービスは十分、
部屋付きのサービスさえ無いようでしたが、それもかまいません。
以前なら民宿のような低料金で、豪華なホテルが利用できて、
食事もお風呂も大満足なのだから、これが現代式なのでしょう。