畠山重篤さん講演会

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すでにガイアシンフォニー第8番への、出演が予告されており、
国連のアジア地区、フォレストヒーローズにも選ばれた畠山重篤さんが、
南砺市で講演されると聞いて、さっそく話を聞きに行ってきました。
彼はすでに学校の教科書にも紹介されている、森に木を植える漁師で、
NPO法人「森は海の恋人」代表でもあり、カキの養殖が本業で、
天皇皇后両陛下に、海と森の関係をレクチャーされている人でもあります。

東北大震災で壊滅的な被害を受けながら、いち早く復興に取りかかり、
すでに新しいカキの養殖も始めている、と聞いているのですが、
いったいどんな人物で、どのような話をされるのか興味津々でした。
ヒゲもじゃの穏和な顔立ちで、ちょっと首をかしげながらしゃべる様子が、
なんとなくチャーミングな人ですが、話し始めると止まらない感じで、
鉄を介した森と海の関係について、淀みなく興味深い話をされたのです。

すでに24年前から、川上の森に広葉樹を植える活動をされていますが、
森の腐葉土植物プランクトンを生み、それが動物性プランクトンを生んで、
最終的には魚の餌になることで、海が豊かになると言うお話しです。
簡単に言ってしまえばこれだけの話ですが、どうしてそうなるのかは、
最近になるまでわからないことが多く、この循環の全体を理解するには、
地球全体の構造や海の営み、微細な化学反応まで知る必要があったのです。

例えば世界の海洋には、海水中の栄養度を測ってみると豊かなのに、
プランクトンの少ないHNLCと呼ばれる海があって、その理由だって、
鉄分の不足によるものとわかったのは、つい最近のことだったのです。
最近は地球温暖化が問題になっていますが、実は自然界の流れでは、
森林が減ったことによって、二酸化炭素の排出量が減ってきているので、
地球は寒冷化が始まっている、と言う側面もあるとも伺いました。

人間がエネルギー使用で排出するCO2は、何も生み出しませんが、
植物がCO2を排出する場合には、腐葉土を生み出してフルボ酸鉄を作り、
これが海に流れ込むことで、海にプランクトンが発生するというのです。
逆に言えばいかに多くの栄養素があっても、鉄分が不足してしまえば、
プランクトンにはならないので、よい漁場というのは限られている。
三陸沖に魚が豊かなのは、アムール川が鉄分を運ぶからだったのです。

今ではすっかり定着した感のある、「森は海の恋人」ですが、
これを英訳するときに、LOVEを使うと何か違う感じだったので、
両陛下にレクチャーしたとき、皇后によい翻訳がないか伺ったそうです。
すると皇后は、long for を使ってはどうかと意見をくださったので、
今では“The sea is longing for forest.”と訳しているそうで、
こんなエピソードも、なんだか嬉しく聞くことが出来ました。

カキ養殖の家業を継いだ畠山さんが、様々な困難にぶつかったとき、
その原因を探っていくうちに、地球の正体や生命の正体が見えてくる。
その探求心こそが、稼業を成功させる大切な鍵だったのでしょう。
彼は行動でそれを求めるうちに、気がつけばフォレストヒーローとなり、
両陛下にレクチャーをして、アドバイスも得るようになったのです。
僕らはこの話から何を学ぶのか、課題はあまりにも大きそうです。