「進撃の巨人」

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僕はもともと、アニメファンではないのですが、
進撃の巨人」が面白い、と聞いて気になっていました。
そこへGyaO!で、9月一杯無料配信していると知ったので、
この機会とばかり見始めたのですが、たしかに面白い。
好きなタイプではないのに、内容も絵もよくできているので、
ついつい見てしまい、先ほど15話まで見終わりました。

原作は別冊少年マガジンで、2009年から連載されていますが、
単行本の発行部数は、2300万部を越えているようですし、
この作品はその後人気を得て、小説、アニメ、ゲームになっています。
さらに来年には、実写映画にもなると聞いていますので、
まだ当分のあいだ、ブームは続くだろうと思われる作品です。
もともと読み切りのマンガだったものを、講談社が高く評価して、
別冊少年マガジン創刊時に、連載マンガとして企画されました。

作者は諫山創(いさやま はじめ)さんですが、これがデビュー作で、
デビュー作がこれほどヒットすることも、珍しいでしょう。
バックに講談社がいますので、もはや個人のマンガと言うよりも、
社をあげての企画なのでしょうが、アイディアはたしかに面白いのです。
巨人の襲撃によって、閉じこめられた空間で暮らす人類が、
さらに追いつめられそうになった時に、主人公のエレン・イェーガーが、
この現状を打破する力を持って、人類が反撃に向けて動き出します。

どうして巨人が出現したかなど、多くのことは未知のままですが、
エレンの父親が何か関係しており、その秘密を求めて戦いが進みます。
僕が見たアニメでは、荒木哲郎が監督をしていましたし、
キャラクターデザインや音楽も、重要な要素になっていました。
そのほか内容、アニメ、マンガ、ゲームなどの詳しいことは、
その道に詳しい人にお任せしますが、僕がこれを取り上げたのは、
内容に関して気になることがあったので、書いておきます。

もともと人類には、いくつもの人種や思想があって争いが絶えず、
これを統一するには、人類の外に強力な的の存在が必要だと考えます。
その正体はともかくも、こうした人類の要求が巨人となって、
いつのまにか人類の存亡まで危うくする、脅威となるのですが、
「家族」とか「仲間」とか、人が大切にする要素に導かれながら、
巨人出現の謎に迫っていく、この構成もたしかに興味深くて面白い。
だけど物語の進展では、弱肉強食が強調され過ぎている気がするのです。

現実の人間には、人間こそが脅威であって殺戮の恐怖があります。
人間の姿をした人間ではない「圧倒的に強い外敵」とは、何なのか?
あるいはこの作品の中でも頻繁に出てくる、内なる脅威の問題は、
それこそ強力な外敵の存在によって、常にうやむやにされているのです。
こうした設定を短絡に見れば、人類の戦争を肯定しているようで、
生き残るためには、敵(と決めた人類の一定の人)を殺す必要がある、
勇気を持って戦争に立ち向かおう、と主張するように見えるのです。

それでなくても、日本には戦争したくてたまらない人がいて、
平和を求める人を、安寧の豚と言いそうな人が増えているのですから、
こうした殺戮を勇気と思い違いする人も、大勢いそうな気がします。
この作品をよく理解すれば、戦争を肯定しているのではなく、
むしろ戦争による殺戮を避けたい努力の、積み重ねなのですが、
人間は悲しいかな多くの殺戮シーンによって、殺戮に慣らされるのです。