辛淑玉さん講演と意見交換

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今年のEフェスタは、「支えあい、生かしあう高岡に!」をテーマに、
メインイベントとして、辛淑玉さんの講演と参加者との語らいがありました。
僕にとって辛さんは、辛辣な人権活動家と言うイメージでしたので、
今回の講演『今、起きていること』は、どんな話が聞けるのか楽しみでした。

講演の内容は、最近ネットを賑わせているバイトテロを取り上げて、
若者はどうして、こんな馬鹿げた行動をするようになったのか?と始まり、
かつての正社員による雇用安定など、すでに昔話なのだと話されました。
今や若い人たちが正社員に就こうとしても、わずかな人しか採用されないので、
多くの若者は、アルバイト的な仕事で生活を立てていくしかない現実がある。

アルバイトの仕事というのは、単に自給いくらの低賃金であるばかりか、
将来に繋がる夢や希望がまったく見えない、不安定な仕事でしかないと言うこと。
こんな不安定な仕事であれば、とりあえず働き口はいつでもあるのだから、
今の仕事に対する誇りや執着もほとんど無いので、自分のアイデンティティもない。
そこで何か面白いことや楽しいことを、やりたいと思った時には、
他者のことを考えずに、自分の小さな世界のことしか思いを馳せない。

こうした社会性のない孤立した感覚が、自らの疎外感となって憎しみを生み、
この憎しみの行き場として、ヘイトデモのような過激な行動も登場する。
辛さんの講演から僕が印象に残ったのは、こうしたバイトテロこそ、
人種差別のようなヘイトスピーチと同じ根を持っており、そこにあるのは、
政治的に切り捨てられた人たちの、やり場のない怒りだと言うことです。

僕自身は飲食店をほとんど利用しませんが、今では多くの人が利用しており、
その商品の上や洗浄棚やカウンターなどに、人が寝そべったりすればイヤでしょう。
そうした人が嫌がることを、面白がってやる行為というのは幼稚ですが、
大のおとながそうしたことをやるようになった社会とは、いったい何なのか?
なんとなく疑問に思っていたことが、明確に答えていただいたようで、
なるほど辛さんには、鋭い視点があるのだなあ・・・と感心もしたのです。

それではこの現実の中で、僕らは何をすればいいのか、何が出来るのか?
後半の意見交換の時に、これから辛さんがやろうとしていることも聞いてみました。
会場内からいくつもの質問や意見があったので、それらに答える話の中で、
辛さんは理解し合える人との繋がりの大切さと、態度を曖昧にしないことの大切さを、
自らの生き方や計画の中で、自らの行動規範として話されたのが印象的でした。

善いものは善い、嫌いなものは嫌い、と常に明確に答え続けることで、
周囲の人たちも、辛さんが何を求めているか自ずとわかるようにしておくのです。
それがメッセージとなって、自分が何を守り、何と戦っているのかが明確になるから、
曖昧でない賛同者が繋がり、大きな力になっているということでしょうか。
そして立場の弱い人たちを守る最後の砦として、地方自治の大切さを取り上げ、
国とは違う視点で、市民が主体になることの重要さを話されたのも強く心に残りました。

新しい時代に向けて、いつまでも過去の価値感にしがみつくのではなく、
例えばアルバイトのような仕事でも、いくつかを掛け持つことで生活を成り立たせる。
出産時期には一つ減らし、子育て時期には一つ増やして生活を賄えるような、
柔軟な対応ができる社会を、作っていくことの大切さを言われたように思います。
そのためにも僕らは、もっと直接人が集って話し合うことが大切なのでしょう。
 
いつも当たり前のことに行き着くのですが、人には人が大切で、
面倒ではあっても、生身の人間同士が顔を付き合わせながら意見交換する、
人間の温度がわかる社会を作ることが、なによりも大切と言うことでしょう。
例えば金銭経済などは、二の次三の次の問題なのです。